縄文人も障害児を介護 解明進む定住生活 – 産経ニュースより
縄文人も障害児を介護 解明進む定住生活
2021/5/26 22:42
介護を受けて成長したとされる縄文時代の人骨。北海道洞爺湖町の入江貝塚で見つかった(縄文遺跡群世界遺産保存活用協議会提供)
縄文人は、重い障害のある子供を育てていた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界文化遺産に登録される見通しとなった「北海道・北東北の縄文遺跡群」では、筋肉がやせて介護を受けながら成長したとみられる約4千年前の人骨も出土。食料を探して移動するという狩猟・採集生活の従来のイメージとは異なる暮らしぶりが浮かぶ。筋肉がやせる原因となった病気をめぐって新たな説も出ており、縄文人の助け合い精神が改めて脚光を浴びそうだ。
この人骨は縄文遺跡群を構成する集落跡「入江貝塚」(北海道洞爺湖町)で昭和42年ごろに出土。頭の大きさに比べて手足の骨が極端に細いため、ポリオ(小児まひ)にかかったと説明されてきた。
「人類は農耕の開始によって定住した」という歴史の見方があるが、入江貝塚ではイルカやエゾシカといった自然の恵みを年間を通して計画的に確保することで定住。大規模な3つの貝塚とその中に形成された墓のほか、竪穴住居跡も見つかっている。移動生活では介護を受けるのは難しかった可能性がある。
同町教育委員会によると、介護を受けた人骨は頭が細いことから女性とみられていたが、国立科学博物館の研究者による近年のDNA分析で男性と判明。男性に多い難病「筋ジストロフィー」の可能性が指摘されているという。
町教委は解説施設「入江・高砂貝塚館」を今夏にリニューアルオープン。ポリオと筋ジストロフィーの両方の説を紹介する計画だ。
学芸員の沢野慶子さんは「寝たきりの状態になった原因として、考えられる病気の一つがポリオ。DNAを調べた研究者によって男性と判明し、筋ジストロフィーの可能性が高まっているが、いずれも決定的な証拠はない」と話している。