リニア中央新幹線工事のニュース 静岡側「100%納得できぬ」 リニア工区の中間報告、なお議論残る

鉄道:リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議について – 国土交通省

静岡側「100%納得できぬ」 リニア工区の中間報告、なお議論残る:朝日新聞デジタル

静岡側「100%納得できぬ」 リニア工区の中間報告、なお議論残る
玉木祥子
2021/12/20 10:04

 リニア中央新幹線静岡工区をめぐり、国土交通省の有識者会議が設置されて1年8カ月。19日に発表された中間報告で、静岡県が求めるトンネル湧水(ゆうすい)の「全量戻し」を実現する工法は示されなかった。難波喬司副知事は「水資源についての対話を再開したい」と述べ、県の専門部会で県とJR東海が直接協議を進める。
 報告では、トンネル掘削によって湧き水が出ても、導水路トンネルなどで水を戻せば中下流域の河川流量が維持されることが示された。これまでJR東海は、先進坑が貫通するまでの約10カ月間に県外に流出する水は戻すまで時間がかかると説明している。
 「静岡県の意見もかなりの部分を反映していただいたが、必ずしも100%評価できるものではない」。難波副知事は会議後の記者会見で、中間報告の内容について一定の評価をしつつも苦言を呈した。県はトンネル湧水の全量戻しについて、工事期間中に流出する湧水を含めて、時間差なく大井川に戻すことを求めている。しかし、報告ではJR東海の主張に沿い、工事の安全性を確保するためには山梨県側から上り勾配で掘削しなければならず、その際に湧水が県外流出するのは避けられないとした。そのうえで「関係者が納得する方策を協議すべきだ」と指摘した。
 JR東海の宇野護副社長は「水を大井川に戻す方策は時間差の問題も含めて静岡県と協議をしていくことになる。(全量戻しを実現できる方策を)考えていこうという意思はある」と話した。

 難波副知事は全量戻しのほかにも、発生土置き場の安全性や大井川の水質への影響などを挙げて、「十分に議論されていないと受け止めている」とし、県の専門部会で協議していく姿勢を示した。
 報告には、JR東海の今後の対応について、「地域の不安や懸念が払拭(ふっしょく)されるよう、真摯(しんし)な対応を継続すべきである」と明記された。会議の福岡捷二座長(中央大学研究開発機構教授)は「単なる解析ではなく、想定されるリスク対策やモニタリングをちゃんとやることを相当議論してきた。JR東海にはぜひとも実行していただきたい」と話した。(玉木祥子)

リニア初の大深度地下工事、JR東海が掘削に着手、住民から反発も:朝日新聞デジタル 2021年10月14日

リニア初の大深度地下工事、JR東海が掘削に着手、住民から反発も
小川崇、阿久沢悦子
2021年10月14日15時30分

写真・図版 JR東海がリニア中央新幹線のトンネル工事で使うシールドマシン=2020年1月、神戸市兵庫区
JR東海がリニア中央新幹線のトンネル工事で使うシールドマシン=2020年1月、神戸市兵庫区
記事に付く写真・図版 記事に付く写真・図版 記事に付く写真・図版
 リニア中央新幹線の工事の一環として、JR東海は14日、東京都品川区の深さ40メートル以上の大深度地下で、シールドマシン(大型掘削機)を使った作業に着手した。リニアでの大深度地下工事は初めて。同工事では東京都調布市で昨秋、住宅街の道路が陥没する事故が起きており、住民の一部が反発している。

 同社によると、品川―名古屋間の286キロのうち、都内や川崎市の33キロと名古屋市などの17キロが同工事の対象区間。直径14メートルのシールドマシンを用いる「シールド工法」で実施する。
 今回の作業について、同社は「調査掘進」と位置づけているが、実際にリニアが走行する区間を掘る。半年ほどかけて、深さ約90メートルの北品川非常口から水平に300メートルほど掘削し、地盤や構造物への影響などを確認する。調査結果は周辺住民に報告し、来年度以降は月ごとに約400メートル掘り進める。

JR東海の金子慎社長は13日の定例会見で「調査掘進は、不安にしっかり答えようということがひとつの目的。調査の結果をお知らせした後で本格的な掘進に入るので、慎重な手順を踏んでいることをご理解頂きたい」と説明した。
 大深度地下工事をめぐっては昨年10月、東日本高速道路(NEXCO東日本)による調布市内の東京外郭環状道路地下トンネルのルート上で、陥没や空洞が見つかった。JR東海はリニア工事の住民向けの説明会で「外環道の陥没場所に比べて対象工区の地盤は締まっている」などと説明していた。

 沿線住民らでつくる「リニアから住環境を守る田園調布住民の会」(大田区)の三木一彦代表は今回の作業着手について「事実上の掘削開始であり、容認できるものではなく中止を求める」として抗議声明を出した。国土交通省が調布市の陥没事故を受けてシールド工法に関する検討会を9月28日に開いたことを挙げて、「この検討会の結論を待たずに工事を開始するなどあってはならない」と話した。
 また、今月26日に東京地裁であるリニア工事差し止め訴訟の第一回口頭弁論や衆院選公示前の着手は「急いで既成事実を作りたいという意図的なものだ」と批判した。

 品川区によると、JR東海から調査掘進開始の連絡が入ったのは11日。東京・生活者ネットワークの吉田由美子区議は「JRは行政と密接に連携を取っているというが、3日前の告知は直前すぎないか」と疑問を呈した。
 14日の作業を現場近くで見守った地元の女性(62)は「説明不足のまま工事が始まるのは心配だ」と話した。(小川崇、阿久沢悦子)

地盤工学の専門家が警鐘「リニア工事は慎重に」 東洋経済オンライン 2021年10月11日 

調布市で起きた外環道陥没事故の教訓と反省
地盤工学の専門家が警鐘「リニア工事は慎重に」
森 創一郎:東洋経済 記者
2021.10.11

「地盤工学の専門家が警鐘「リニア工事は慎重に」 | 調布市で起きた外環道陥没事故の教訓と反省」をはてなブックマークに追加
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外環道の陥没事故を地盤工学の専門家はどう評価しているのか。日本大学理工学部の鎌尾彰司准教授に聞いた。

外環道の工事では沿線住民の要望で緊急時の手順も掲げられた(記者撮影)
東京・調布市の東京外かく環状道路(外環道)での陥没事故を受け、原則として地権者の同意・補償なしに地下深くの工事を認める「大深度地下の公的使用に関する特別措置法」(大深度法)の是非が改めて問われている。
事業主体である東日本高速道路(NEXCO東日本)が事故後につくった有識者委員会は、「特別な地盤で不適切な工事が重なったことで陥没事故が起きた」としている。
今回の調査結果をどう受け止めるべきなのか。また、2022年3月までに試験掘進が始まるリニア中央新幹線の工事で影響は出ないのか、地盤工学に詳しい日本大学理工学部の鎌尾彰司准教授に聞いた。
事故現場は特殊な地盤だった

――外環道の陥没事故を受け、リニア沿線の住民からも不安の声が聞かれます。外環道事故の有識者委員会の報告では、陥没現場は特殊な地盤であり、そこで作業ミスが重なったと結論づけました。第三者の専門家から見て、なぜ特殊地盤を見抜けず、作業ミスまで起こったと考えますか。

調査報告書が事故現場の地盤を「特殊」だというのは、砂の粒子よりも小さいシルトや粘土の粒子が含まれない砂の層だということを言っている。事故が起きた場所は多摩川に近く、地下水の流れも豊富で、粒子の小さいシルトや粘土の粒子が砂の粒子の中を流れてしまったせいなのか、それ(シルトや粘土)が(見当たら?)ない。

砂は握っても固まらない。作業ミスによる土砂の取り込みすぎで、ぎゅっと押さえ付けられていた硬い砂が解放されて地盤の緩みが上方に拡大し、連鎖反応が起きて陥没や空洞ができた。

さらに、掘削地点では当初、礫(小石)が少しの割合しか含まれていないということだったが、実際は礫が想定以上にあったようだ。使っていた過去のボーリング調査のデータが正確でなかったため、少なめに見てしまった。そのことが作業ミスを誘発し、土砂の取り込みすぎを招くことになった。

外環道で採用されている「泥土圧式工法」は、掘削して出てくる土をベルトコンベアで坑口まで運ぶ。ところが、砂や礫は水と混じらないので地下水と土を一緒にベルトコンベアで運ぶことができない。そこで一般的にはベントナイトなどの添加剤を加えてネバネバにして、ベルトコンベアで送る。

かまお・しょうじ/1966年生まれ、千葉県出身。1991年日本大学大学院理工学研究科土木工学専攻修了。同大学助手、専任講師を経て2008年4月から現職。地盤工学会大深度地下調査マニュアル検討委員会委員(記者撮影)
ところが、ベントナイトを使った土は産業廃棄物になってしまう。いまは環境への対応も求められ、処分料も高額なので、土をネバネバにする添加剤は新しく開発されたシェービングクリームのような泡状のもので、トンネル内で砂や礫を運ぶ際の流動性を確保できる。添加剤が溶けて砂や礫だけになるとそのまま埋め立てにも使える。しかし、そうした便利なものが出てきたことで、今までの工事技術の伝承がおろそかになっているのではないか。

外環道の工事では新しい添加剤を過信して一気に掘削を進めたら、掘削した土砂を取り込みすぎて陥没が起こってしまった。そういう側面もあったのではないかと推察している。便利なものができると、人間の熟練と勘が退化してしまう。

実際に掘ってみなければわからない

――JR東海は、リニア中央新幹線の都内の地盤は、外環工事で陥没が起きた場所のような「特殊な地盤はない」としていますが、専門家からみてどのような注意が必要だと思いますか。

トンネルは線だが、事前のボーリング調査は点でしかやらない。結局、実際に掘らないとわからない。(事故現場のように)予想外の礫があったら場合、シールドマシンで砕けるのか、違う対策をとるのか。それは実際に掘らないとわからない。

(リニア工事の)資料を見ると、トンネルを掘る層では砂があったり、礫があったりするので、砂が落ちたとしても(礫や粘土などで支えることで)そんなに大きな規模では落ちない。(上層では)粘着性の高い粘土で受け止めてくれるので、外環道のように空洞ができて下に崩れ落ちるとは考えにくい。ただ、絶対かと言われたら、それはわからない。

実際に外環道で事故があったのだから気を配りながら、計測値を監視しながら、より慎重な工事が必要になる。

――大深度法でいう「大深度地下」とは、地上から40メートル以下、もしくは超高層ビルの基礎を支えるような堅い支持地盤の10メートル下のより深い方とされています。しかし、支持地盤の有無は掘ってみなければ確認できません。

支持地盤というのは岩盤のことで、地表に出ようとしたマグマが外に出られず、冷えて固まったものだ。その上に土が数万年もかけて堆積する。堆積物は通常は川の水や海の水で運ばれてくるので、横方向に連続する。複数地点をボーリングして、この土とこの土は同じだから、地盤はまっすぐだと推定する。

確かに地殻変動などで地盤が褶曲する(曲がりくねる)場合もある。ただ、地殻変動は何万年のレベルで起きるのに対して、ボーリングは昭和に入ってから実施されているためボーリング後に地殻変動が起こったとは考えにくい。

ただ、いざ杭を打ってみたら、支持基盤に届かないという例はいくらでもある。実際の工事では、掘りながら出てきた土砂を見て、事前調査通りになっているか、支持地盤の礫や岩盤が出てくるか、実際に工事を進めながら確認するしかない。

局所的に地層が不連続となっている可能性はあるが、1メートルずつボーリング調査をやるわけにもいかず、それを言っていたら何も建てられない。

地上への影響は簡単に証明できない

――国は過去に「シールド工法では地上への影響は生じない」とし、陥没事故が起こった後も「適切な工事をしていれば地上への影響は生じない」と説明していました。

地上に影響がないということを、そう簡単に証明できるとは思わない。大深度法でも「特殊地盤による影響はあり得る」と注意書きをせざるをえない。(大深度を)40メートル以下などとしたのは合理的だとは思うが、注意書きが必要なことが今回の事故でわかった。調布での事故を踏まえて注意喚起をしてもらいたい。

リニアの工事では品川工区の入り口で試験掘削をして、振動なども計測すると言っているが、住宅街での計測データをとらないといけないのではないか。砂の中に礫がある地層部分を通ると礫を削る音がする。静寂な住宅街で我慢できるか。(騒音の問題は)しっかりと検証していただきたい。

一方、外環道の工事ではNEXCO東日本が言う震度1程度ではなく、スマホで測ったら震度3~4レベルだったという住民の証言もある。道路から泥水が噴き出してきたという証言もある。これは液状化のせいだと推測しているが、地面が液状化すると、揺れも震度4レベル以上になる。実証はできないが、液状化の目撃証言を信じるならば、それくらいの揺れがきたことは考えうる。

ところが、NEXCO東日本はシールドマシンの中で測ったら、わずかな揺れだったと主張する。住民にとってはデータを隠しているのか、測っていないのか判然とせず、そこが住民の不信感にもつながっている。不安を抱える住民に寄り添った情報の開示や説明が必要だ。

リニア中央新幹線 人命にかかわる大深度工事問題 | 論文 | 自治体問題研究所(自治体研究社) 2021年9月28日 

【論文】リニア中央新幹線 人命にかかわる大深度工事問題

樫田 秀樹(かしだ ひでき)
ジャーナリスト
2021年9月28日
月刊『住民と自治』 2021年5月号 より

「地表に影響を与えない」はずの大深度工事の「神話」は、昨年10月の東京・調布市の陥没事故で崩れました。しかし今年、リニア新幹線で大深度工事が始まります。ルート上の住民の不安を伝えます。

予想していた事故が起きた

2020年10月18日。東京都調布市東つつじヶ丘2丁目の住宅街の生活道路が陥没しました。民家のガレージ前に幅5メートル、長さ3メートル、深さ6メートルの穴が現れ、近隣住民は一時的に避難を余儀なくされました。
陥没現場のすぐ近くに住む住民は、事故に驚くよりも「やはり起きたか」との認識でした。住宅街の地下で建設されていた高速道路「東京外かく環状道路」(以下、外環)のトンネル掘削による危険性を7年も前から不安視していたからです。
外環計画や調布市の陥没事故についての詳細は他の著者も論じているので、詳細はここでは割愛しますが、一つだけいえるのはこの事故で「大深度法の神話」が崩れたことです。
陥没事故のニュースに「やはり起きたか!」と現場に駆けつけたひとりが、東京都大田区田園調布の市民団体「リニアから住環境を守る田園調布住民の会」(以下、住民の会)の三木一彦代表(63)です。三木さんは現場の状況に息をのみ、こう思った─「田園調布でも同じことが起きるのか…」
というのは、田園調布の住宅街でも、調布市と同じように、その大深度(地下40メートル以深)を直径14メートルもの巨大掘削機、シールドマシンでトンネル工事が行われるからです。
JR東海が建設する「リニア中央新幹線」(以下、リニア)は2027年に東京(品川駅)と愛知県名古屋駅の286キロメートルを最高時速505キロメートルでわずか40分で結ぶ計画です。そのうち東京都、神奈川県、愛知県では延べ約50キロメートルが大深度での掘削となります。

(中略)

安全であるかを誰も検証していない
そして施行から20年経った今まで、大深度法が適用された事業は極めて少ないです。
事業者が大深度工事をするには、国土交通大臣から「使用認可」を得る必要がありますが、その第1号は、2007年の神戸市の「大容量送水管整備事業」、直径約3メートルの水道管を約270メートル敷設するという小規模建設でした。
次に認可されたのが外環(2014年3月)。3番目の認可がJR東海のリニア中央新幹線です(2018年10月)。そして、現時点で最後の4番目の認可が、大阪府の地下河川計画「淀川水系寝屋川北部地下河川事業」です(2019年3月)。
JR東海も大深度工事の住民説明会を2018年5月に1都2県で開催。そこでは、住民からの「地下からの騒音と振動はないのか?」との質問に、JR東海は「大深度での振動も騒音も地表に近づくにつれて減衰するので、地表に影響しない」と回答しました。
だが、疑問を抱く住民も少なくはありませんでした。大深度工事が地表に影響を与えるか否かの実証を誰もしたことがないからです。リニア山梨実験線にすら大深度区間はありません。この点について、地盤の研究を進める「環境地盤研究所」の徳竹真人所長はこう解説します。
「土質力学の専門家などは『トンネル直径の1・5倍以上の土被りがあれば地上に影響ない』と学会などで述べていました。実際、運用に問題はなかった。でも、かつては複線鉄道の地下工事で約8メートルだったトンネル直径が、近年、徐々に巨大化し、リニアで14メートル、外環で16メートルです。心配だったのは、こんな大口径トンネルに従来の数値計算モデルを適用して良いのかということ。実際、調布では大深度からの振動、騒音、陥没という『常識』外のことが起きました」。
そして、「従来の計算モデルの適応限界を誰も経験していない」と明言しました。
欠陥法
三木さんが、知人を通じ、リニアが田園調布の地下を通ると知ったのは2018年7月。ルートのほぼ直上に住む三木さんは驚き、すぐにJR東海に「説明会の開催を」と要望しましたが、JR東海は「すでに終了している」と受け付けませんでした。
そして、田園調布に住む朝倉正幸弁護士が、自宅が偶然にもリニア・ルートの直上であることからすぐに大深度法を調べると、土地や家屋の所有権よりも大深度地下の使用権が優先されることを保証したその内容に、「これは、財産権の侵害を禁じた憲法29条違反だ」と解説すると、三木さんはますます不安を強めました。
また、大深度法は、地上にはそもそも損害が発生しないとの前提でつくられているので、補償を想定していません。ただし、大深度にある井戸や温泉の源泉やパイプなどは例外です。しかし、第37条でこう定めています。
「(それら施設に)具体的な損失が生じたときは、(土地所有者は)告示の日から1年以内に限り、認可事業者に対し、その損失の補償を請求することができる」(傍点筆者)。
リニアの大深度使用認可の告示は2018年10月17日。しかし、リニアは2014年10月に国交省に事業認可されて以来、立坑や斜坑、仮残土置き場、取付道路などの準備工事はしているものの、告示から2年以上経った今も、大深度工事は未着工。つまり、工事前からすでに、土地所有者の地下の資産については誰も補償されないのです。
さらに、大深度工事の指針ともいうべき国交省の「大深度地下使用技術指針・同解説」によれば、地中の地質を確認するための作業として「100~200メートル間隔でのボーリング調査が目安」と記載されているのに、大田区と隣の世田谷区で見ると、JR東海はルート直上では、ボーリング調査をほぼ400メートル間隔でしか行っていません。これが意味するのは、大深度工事は都市部での地下開発のため、住宅密集という都市特有の物理的背景が工事の基礎となるボーリング調査を難しくし、ずさんな事前調査しかできないことです。
実際、外環でもルート直上でのボーリングは約900メートル間隔でしか行われていません。それも一因として、地中の地質を把握できずに陥没事故につながりました。朝倉弁護士は「これは欠陥法です」と断言します。
田園調布の住民が動く
田園調布は騒音、振動、地盤沈下などに見舞われないか。不動産価値が下落しないか。この不安から、三木さんは「住民の会」を立ち上げました。そして、大田区を中心に大深度使用認可の取り消しを求めた730人分の審査請求書を集め、2019年1月10日に国交省に提出しました。
国交省からその回答である「弁明書」が届いたのは1年半も経った2020年6月1日。そこに書かれていた「住民が抱くのは抽象的な危機感に過ぎない」との文言に三木さんは憤りを隠せませんでした。
これに対して、9月8日、三木さんたちは国交省に「反論書」を提出し、そこではこう指摘しました。
「今まで道路で起きていた陥没や地盤沈下が住宅街で起きることになり、住民は生命、身体の危機に直面することになる」。
果たして、その翌週の14日に調布市東つつじヶ丘2丁目の大深度を直径16メートルの巨大シールドマシンが掘削し、10月18日に陥没事故が起きたのです。
11月20日、「住民の会」をはじめリニア建設に懸念を抱く4団体が、同じ事故は起き得る以上、リニアの事業認可の取り消しなどを求める要望書を国土交通省鉄道局に提出しました。担当者は「調布市での陥没の調査結果を待って対応したい」と話すだけでしたが、筆者の質問に対し、「陥没事故をJR東海は重く受け止めています」と答えました。
だが、その場で国交省はこうも明言しました。
「大深度工事をやると決めた場合、JR東海は2021年度には品川駅近くからシールドマシンを発進させます」。
シールドマシンは1日平均10メートル前後を掘削するので、品川駅から約7・5キロメートル離れた田園調布の大深度は、その1年半から2年後には掘削されることになります。
しかし、リニア計画における問題点の一つは、リニアの大深度工区の約50キロメートルの直上やその周辺には数万軒の家屋があるはずですが、田園調布のように問題意識をもって行動する住民は例外的で、ほとんど誰もが、自宅の真下をリニアが通過することなど知らないのです。その理由は、大深度法は「住民との交渉不要」での工事を認めている以上、事業者が事業の周知をしなくてもいいからです。
しかし、筆者が首都圏でのリニア大深度ルートを調べると、ルート直上には保育園から高校までの教育施設が12もあります。ルート周辺や公園等もいれるとその数は倍以上です。子どもも保護者もこれを知らないのです。
今、東京都、神奈川県、愛知県ではリニア計画に反対する市民グループが、陥没や地盤沈下などの危険性を訴えるチラシを作成し、ルート直上の家々に配布を続けていますが、まだまだ現実感を持てない住民が多いようで、さらなる周知が急がれます。
起こらないとされていた事故が起きた以上、国会で大深度法の見直しは当然あってもいいはずです。これは人命がかかっている問題なのですから。

リニア工事で「陥没の恐れ」 差し止め求め都民提訴―東京地裁:時事ドットコム 2021年07月19日 

リニア工事で「陥没の恐れ」 差し止め求め都民提訴―東京地裁
2021年07月19日19時30分

リニア工事差し止めの提訴後に記者会見する原告団長の三木一彦さん=19日午後、東京都千代田区
リニア工事差し止めの提訴後に記者会見する原告団長の三木一彦さん=19日午後、東京都千代田区
 JR東海が進めるリニア中央新幹線の地下トンネル工事をめぐり、東京都の住民24人が19日、同社を相手取り、居住地域にある沿線ルートの工事差し止めを求め東京地裁に提訴した。東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネル工事で昨年、ルート真上の地盤が陥没したことを受け、同様の工法が使われているリニア工事でも被害が発生する恐れがあるとしている。
 訴状によると、24人は大田区田園調布や世田谷区東玉川などの住民で、工事によって陥没事故や地盤沈下などが予想され、生命の危険に加え地価の下落や財産上の被害も懸念されると主張。「多量の電力を浪費し環境破壊も引き起こすなど、公共性がない」と批判している。
 提訴後に都内で記者会見した原告団長の三木一彦さん(63)は「取り返しのつかないことが起きる前に、食い止めないといけない」と話した。
 JR東海の話 訴状は見ていないが、適切に対応したい。(2021/07/19-19:30)

<社説>調布陥没の波紋 リニア工事は大丈夫か:東京新聞 TOKYO Web 2021年2月24日

 

<社説>調布陥没の波紋 リニア工事は大丈夫か
2021年2月24日 07時25分
 東京都調布市の住宅街で起きた市道陥没は、地下四十七メートルの大深度でトンネルを掘り進めた工事が原因である可能性が高いとの調査結果が出た。同じ大深度のリニア中央新幹線工事は大丈夫か。
 調布市の住宅街で昨年十月、市道が幅五メートル、長さ三メートル、深さ五メートルにわたり陥没した。地下四十七メートルでは東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事が進み、事業者・東日本高速道路の有識者委は大型掘削機による工事との因果関係を認めた。地盤に特性があり、掘削機を動かしやすくしようと地中に気泡を注入したために地盤が緩み、土砂を大量に取り込みすぎ陥没につながったという。
 地表から四十メートル以上深い地下は、二〇〇一年施行の大深度地下使用法に基づき、用地買収は不要で公共利用が許されている。深い井戸や温泉などは例外として、大深度に利用価値はなく、土地所有者に損失は生じないとの解釈だ。
 東日本高速はいったん工事を中断し、家屋損傷などは補償する方針だが、住民らの連絡会は健康被害や資産価値の下落も補償するよう求めている。地元では以前から振動や騒音、地盤沈下に悩まされ、不信感を募らせていたようだ。大深度は法的には無補償を原則とするがゆえ、事前に住民とじっくり話し合って信頼関係を構築する機会がないとの懸念はかねて指摘されていた。
 気になるのは、二七年の開業を目指すリニア工事だ。外環道と並び、大深度法が認めた代表的な事業で、東京都品川区−川崎市−町田市(三十三キロ)と愛知県春日井市−名古屋市中区(十七キロ)の大深度で近く着工を予定する。
 今回の陥没で、大深度工事は「地上に影響しない」という大前提は崩れたといえる。より厳密な施工管理は必須であり、工事への疑問に誠実に答えることが求められよう。赤羽一嘉国土交通相がリニア着工前に、外環道陥没の原因究明や、再発防止策の取りまとめが必要との認識を示していることは当然だろう。
 リニアはそれでなくても、南アルプス(静岡市)を貫くトンネル工事による大井川の流量や地下水への影響を巡り、地元とJR東海の対立が続いており、静岡県内の着工は見通せていない。
 道路や鉄道には公益性があるがゆえに国費が投じられたり、特例が認められたりしていることを事業者は肝に銘じてほしい。安全確保や情報開示の徹底など、真摯(しんし)な姿勢を忘れてはならない。

リニア工事のトンネル陥没、原因は不適切な掘削断面 | 日経クロステック(xTECH) 2019.06.03 

記事一部

リニア工事のトンネル陥没、原因は不適切な掘削断面
谷川 博 日経 xTECH/日経コンストラクション
2019.06.03
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全1017文字
 岐阜県中津川市内のリニア中央新幹線中央アルプストンネルの建設工事で、非常口となるトンネルの地上部が4月8日に陥没した事故は、不安定な地山に適さない断面形状で掘削したことが原因とみられることが分かった。

 JR東海から工事を受託している鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が5月28日、陥没発生後に実施した地質調査の結果も踏まえ、推定原因を発表した。


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