障害ある子ザルを抱いたオス、専門家も驚いた リーダーの条件とは

障害ある子ザルを抱いたオス、専門家も驚いた リーダーの条件とは:朝日新聞デジタル より

障害ある子ザルを抱いたオス、専門家も驚いた リーダーの条件とは
森直由
2021/9/26 10:00

 自民党の総裁選が佳境を迎え、次期衆院選も近づいてきた。リーダーの条件とは何か。淡路島モンキーセンター(兵庫県洲本市)では、約350匹のニホンザルの群れのリーダーが昨年末、約4年ぶりに交代した。40年以上、群れを観察してきたセンター長の延原利和さん(67)は「群れを最優先に考えて行動するのがリーダーの共通点。人間にも、当てはまるのではないか」と分析する。
 センターは1967年に開園。サルは朝に山から下りてきて、夕方には山に帰る。全国から見てもらおうと、2017年に園内に定点カメラを設置し、ユーチューブの24時間無料ライブ配信が人気を集めている。
 淡路島のサルは、全国でも珍しいほど寛容性が高い。専門家らの間でも、仲が良く、優しい性格の集団として知られている。群れでは長い間、平均3年ほどで、平和的にオスのサルの序列1位(リーダー)が代わってきた。
 大きな変化の前兆があったのは1988年の冬。延原さんは驚くべき光景を目にした。あるオスのサルが、母を亡くした両手足に障害がある生後約6カ月の子ザルを、片腕で抱いて移動するようになった。延原さんは、初めて見た行動だったという。そのオスのサルが、後に93年から「7代目」のリーダーになるマッキーだった。
 まるで母のように子ザルの面倒を見るマッキーは、次第にほかのサルたちから信頼を得ていった。序列を上げ、リーダーに昇格。体の不自由なサルでも追いつけるように、山から山へ移動する群れのスピードを落としたり、行動範囲を以前よりも狭くしたりする工夫をして、約15年間にわたる異例の「長期政権」を築き上げた。
 延原さんは「序列関係が厳しいサル社会の中で、マッキーには『かばう』『許す』『助け合う』といった優しさがあった」と指摘。「弱いサルでも、群れの一員として暮らせるように配慮をしてきた。『マッキー政権』の15年間で、これまで以上に優しいサルの群れの基礎が築かれた」とみている。
「サルたちは力や争いではなく、共に助け合う社会のスタイルを選択した」

 淡路島のサルの寿命は、平均で22、23歳とみられる。31歳と高齢になったマッキーは、2008年3月、自ら身を引いた。序列2位のイッチャン(当時27)が、代わりに「8代目」のリーダーになったとセンターは認定した。
 しかし、イッチャンはエサを奪ったり、弱いサルを追い払ったり、大人げない行動が目立った。メスにも不人気で、1匹で寝そべっていることが多かった。08年6月21日、序列4位だったタマゴ(当時17)の背中をしつこくかみつく姿が目撃された。翌22日午後2時ごろ、序列2位のアサツユ(当時19)、序列3位のカズ(当時18)とタマゴの「側近」3匹が決起した。
 3匹は一斉にイッチャンを攻撃。仰向けで無抵抗のイッチャンの上に、3匹が乗りかかった。手足や腹をかみつかれ、けがをしたイッチャンは、山のふもとにある売店まで逃げてきた。
 この事件の後、群れに戻ったイッチャンは、すっかりおとなしくなった。センターはイッチャンが「クーデター」によって約3カ月で失脚し、代わりにアサツユが「9代目」のリーダーに昇格したと認めた。
 「淡路島のサルたちは力や争いではなく、共に助け合う社会のスタイルを選択したのだろう」と延原さん。翌09年9月には、歩けないほど弱っていた子ザルを、アサツユが母の代わりに抱き、山から下りてくる姿が確認されている。
 今のリーダーは、「11代目」のジョニー(推定21)。17年2月に「10代目」のリーダーになったマートンが昨年、群れから次第に距離を取り始めた。推定25歳で、体力的に群れについて行くのが難しくなったらしい。センターは序列2位だったジョニーが昨年12月、新たなリーダーになったと認定。マートンは今年1月、老衰で死んだ。
 ジョニーは当初、序列関係を気にして怒りっぽい性格だった。だがリーダーになった後、次第に落ち着き、ほかのサルに対して優しくなった。今は序列2位のスティーブン(24)、序列3位のビッグ(推定21)らと共に、安定した群れを築いている。延原さんは「今後3、4年間はジョニーの『政権』が続くのではないか」と予測している。
 センターでは、淡路島のサルの群れの寛容性について、専門家らによる研究が進んでいる。延原さんは「お互いに助け合う集団、家族のあり方など、現代人がすでに忘れてしまったことを、サルの群れから学ぶことができるかもしれない」と話している。(森直由)


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