古墳とバリアフリー、脳性まひの息子と巡った125基

古墳とバリアフリー、脳性まひの息子と巡った125基:朝日新聞デジタル より

古墳とバリアフリー、脳性まひの息子と巡った125基
今井邦彦
2020/6/12 13:00 会員記事
 「推(お)し墳」を熱く語り合う「古墳女子」が出現し、前方後円墳を可愛くアレンジしたクッションが人気を呼ぶなど、古墳ファンの裾野は広がりを見せている。でも実際に古墳を訪ねてみると、入り口が分かりにくかったり、周囲が雑木林になっていたりして、大変な思いをすることも。福岡市南区の元教師、吉田稔さん(64)は十数年前から、脳性まひで車いすを使う長男の健一さん(31)を連れ、福岡周辺の古墳を訪ね歩いてきた。その探訪記「車椅子(いす)ケンイチの福岡近郊古墳案内」(海鳥社)には、古墳ファンの参考になる情報がたくさんつまっている。

 大学で東洋史を学び、福岡市内の中高一貫校で地理を教えていた稔さんが、健一さんと古墳巡りを始めたのは16年前。最初に福岡県福津市の宮地嶽(みやじだけ)古墳を訪ねた。「出土品が国宝になっている有名な古墳なので、車いすでも入れるかな、と思って行ってみた。石室の巨大さに驚き、他にも行けそうな古墳を探して訪ねるようになって、すっかりはまってしまいました」

岩戸山古墳の「別区」に立つ石人のレプリカと=2005年、福岡県八女市、吉田稔さん提供
九州人のルーツ、探る高揚感

 当時、健一さんは養護学校(現・特別支援学校)高等部の生徒。会話は不自由だが、古墳の前で写真を撮る時には笑顔になった。「九州人のルーツ探しに夢中になっている私の高揚感が、健一にも伝わったのかもしれません」。毎週末のように、いつもは父子2人で、遠出をする時には家族で一緒に、古墳巡りをするようになった。
 この本では福岡県内と、福岡からの日帰りが可能な佐賀、熊本、大分各県の古墳、計125カ所を紹介した。「コンクリートの坂道もあるが、かなり急」「車いすで石室まで行くのは難しい」などと、行ってみて分かるバリアフリーについての情報も盛り込まれている。「古墳では遺構の保存が第一なので、完全なバリアフリー化は難しいと思う。でも、駐車場や墳丘のすぐ近くまで行けるスロープは、あるとありがたいですね」
健一再び古墳を巡る日まで

吉田稔さんが健一さんと最初に訪ねた宮地嶽古墳石室の入り口=2004年、福岡県福津市、吉田さん提供
 加えて、健一さんの成長と闘病の記録もつづった。健一さんは3年前から、飲食物が気道に入って起きる誤嚥性(ごえんせい)肺炎をたびたび起こすようになり、食道と気道を分離する手術を受けた。現在は小康を取り戻したが、新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛要請もあり、古墳巡りは中断したままだ。

吉田稔さん(写真左)と長男の健一さん=2018年、福岡県春日市の日拝塚(ひはいづか)古墳、吉田さん提供
 「入院や手術に付き添って、彼が元気な時の記録を、何か残したいと考えるようになりました。この本には、また健一と古墳巡りのできる日々が戻ってほしい、という願いも込めています」
 本についての問い合わせは海鳥社(福岡市博多区、092・272・0120)へ。(今井邦彦)

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