縄文の石偶にギザギザ模様

縄文の石偶にギザギザ模様 3次元計測で初めて確認:朝日新聞デジタル より

縄文の石偶にギザギザ模様 3次元計測で初めて確認
編集委員・中村俊介
2020/6/11 8:30 会員記事
 愛媛県久万高原町(くまこうげんちょう)の上黒岩岩陰(かみくろいわいわかげ)遺跡で出土した1万4500年前(縄文時代草創期)の石偶(せきぐう)に、これまで知られていなかったノコギリ状の文様が多数あることが、中園聡(さとる)・鹿児島国際大教授らの研究チームの3次元計測でわかった。1万年以上前の人類の精神世界に迫る発見だ。
 石偶は石でできた人形(ひとがた)の人工物。この遺跡は1960年代に発掘調査され、下半身にすだれ状の微細な線を縦に何本も彫り込むなど、国内でも類例のない線刻石偶13点が出土したことで知られる。いずれも長さ数センチで、一部には髪や乳房らしい表現もあり、出産時のお守りともいわれる。

 その線は浅く肉眼で確認しにくいため、中園さんらは昨年までに石偶の過半数を高解像度で撮影し、デジタル画像で3Dモデルを作製して観察した。その結果、複数で鋸歯文(きょしもん)と呼ばれるギザギザ文様がいくつも横方向に刻まれ、腹部などを覆っていることが判明した。これまで鋸歯文を想定する指摘はあったが、より多くの模様を精巧な画像で初めてとらえた。

 中園さんは「彫り込みの痕跡やタッチから人工的な線と考えざるを得ない。まじない的な模様の可能性もある」。先史時代の文化に詳しい春成秀爾(はるなりひでじ)・国立歴史民俗博物館名誉教授は「世界の原始絵画と比較して、横描きされた女性器の表現ではないか」と話す。
 研究成果は『季刊考古学・別冊32』(雄山閣)で報告されている。(編集委員・中村俊介)
 愛媛県の山あいに位置する縄文時代草創期から続く遺跡で、1960年代から70年代にかけて発掘調査された。屋根のひさしのように突き出た岩の下から、土器や石偶、石器、骨製のヘラが腰に刺さった人骨や埋葬された犬の骨も見つかった。墓地ともいわれる。

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