不審者が教室に…あなたはどうする 池田小事件の教訓は「学校にプロの警備員を配置しろ!」ということ

不審者が教室に…あなたはどうする 池田小事件の教訓は:朝日新聞デジタルより
不審者が教室に…あなたはどうする 池田小事件の教訓は
森嶋俊晴 2019年2月3日10時00分

 学校が安全な場所であるためには何が必要なのか。かつて起きた児童殺傷事件を経験した教員や遺族らが、現役の教員や学生に教訓を伝えている。今春からは、全国の大学や短大などの教職課程で、学校安全を学ぶことが必修化される。

 「これが事件当時の小学校です」。昨年11月、大阪教育大の天王寺キャンパス。佐々木靖さん(57)は大教大付属池田小学校(大阪府池田市)の見取り図を机上に広げた。

 2001年6月8日、包丁を隠し持った男が、開いていた門から侵入。四つの教室と中庭で児童や教諭を襲い、1、2年生8人が死亡、児童13人と教諭2人が負傷した。このとき、佐々木さんは5年生の担任として現場にいた。現在は付属池田小の校長を務める。

 この日は専門職大学院の教授として、現役教員らに学校安全と危機管理の講義をした。事件前に体育館横で男とすれ違った教諭は、声をかけなかった▽自分のクラスを避難誘導した教諭は、途中の教室に児童がいたのに声をかけず、その後、この教室で児童が殺害された――。犯人や教員の動きを説明しながら、「自分だったらどうしますか」と受講生に問いかけた。

 「ある教室では、席替え中に包丁を持った男が後ろから侵入した。前の教壇にいた先生は教室を出て事務室に行って(110番通報の)電話をかけるんです。教室は子どもと犯人だけになるので被害が広がったとも言えますけれど、だからといって、この先生が1人で立ち向かってもやられただろうし、通報が遅れたかもしれない」

 佐々木さんは、事件後に池田小で繰り返し実施している不審者対応訓練で、複数の教員がさすまたを持って犯人の動きを封じる様子を映像で紹介しながら、「事件当時、私たちは単独行動だった。いまなら多くの先生が駆けつける」と取り組みを説明した。

 こうした学校安全について学ぶ講義が、この春から全国の大学などの教職課程で必修化される。事件があった大教大では08年度から必修化している。昨年10月の講義では、事件を起こした男が「(門が閉まっていたら)よじ登ってまでは入っていない」と裁判で述べたことを藤田大輔教授(安全教育学)が紹介し、学生たちに呼びかけた。

 「門があれば閉める。それが事件の教訓を現場に生かすことなんです」

 藤田教授は14年度に文部科学省の委託を受け、全国の学校や通学路で過去9年間に起きた事件・事故832件を対象に学校の事後対応などを調査した。「同じような事件や事故が繰り返し起きている。どこかで起こったことは自分の学校でも起こるという認識で、過去の失敗や教訓を生かすことが大切」と話す。

 藤田教授が「現在のわが国の学校安全の考え方の方向性をつくった」と指摘するのが、付属池田小事件の遺族が03年に文科省、大教大、池田小と交わした和解の合意書だ。遺族の求めで、合意書には3者の謝罪と再発防止策が盛り込まれた。文科省は、危機管理マニュアルの普及などの学校安全施策を組織的・継続的に対応すると約束。大教大は「適切な危機管理や危機対応を行える教員の養成」を約束し、大学の教職課程で学校安全を必修化した。

 池田小事件で長女の麻希さん(当時7)を亡くした酒井智恵さん(58)は、都道府県などが現役の教員向けに開く研修に講師として招かれている。

 昨年9~11月には、宮城県が5カ所で開いた研修で計579人の教員に自らの体験を話した。学校は事件後に保護者説明会を開いたが、遺族には連絡がなく、疎外感を味わったこと▽子どもは教員不在の教室で襲われて亡くなったが、事件5日後に学校側から「最善を尽くした」と言われ、現場の状況を把握できていないのになぜそう言えるのか違和感を覚えたこと――。

 酒井さんは「起きたことを隠さず話し、事実を共有することで信頼関係が築かれる。最初はうまくいかなくても、先生と遺族がつながっていれば、人間関係は修復できると学んだ」と語りかけた。

 参加した教員からは「学校で命を預かっていることを再認識した」「遺族に寄り添うつもりでそっとしておくことが、実は傷つけることになるとわかった」などの感想が寄せられたという。

 研修を主催した宮城県教委によると、東日本大震災で死亡した県内の公立幼小中高校などの園児・児童・生徒は計327人。35人が行方不明だ。石巻市立大川小学校では、児童74人と教職員10人が死亡・行方不明となった。

 酒井さんは「命の重さは同じなのに、対応する先生によって格差があっては困る。学校安全の学びが、研修参加者から、先生をめざす学生全員に広がるのは大事なこと。合意書にある『継続的な取り組み』が続き、目に見える形で進んでいることを実感する」と話している。(森嶋俊晴)

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