WHOも病気と認定「ゲーム障害」の深刻度 現在のゲームはガチャのギャンブル性が高すぎる

WHOも病気と認定「ゲーム障害」の深刻度(毎日新聞) – Yahoo!ニュースより
WHOも病気と認定「ゲーム障害」の深刻度
1/13(日) 9:31配信 毎日新聞

 インターネットの普及により、「ネット依存症」という言葉を聞くことは珍しくなくなりました。あちこちでスマートフォンいじりをしている人を見かけますが、その中でオンラインゲームに熱中している人も少なくありません。そのような中で、2018年6月、世界保健機関(WHO)が国際疾病分類第11版(ICD-11)で、ゲームに過度に依存している状態を「ゲーム障害」と新たな病気として分類したことを発表しました。脳神経外科専門医の工藤千秋医師(くどうちあき脳神経外科クリニック院長)が、この障害について解説します。【毎日新聞医療プレミア】

 ◇国際疾病分類とは

 そもそも国際疾病分類(ICD)とは、死因や病気の分類に関する国際統一基準です。ある病気の国際的な傾向や経時変化を捉えるためには、病気の分類基準が世界共通であることが必要なために設けられたものです。

 医学は日進月歩で進化を遂げていますから、当然こうした分類も変化します。現時点で使われているICDは1990年のWHO総会で採択された第10版(ICD-10)です。今回発表されたICD-11は実に約30年ぶりの改定となるもので、19年5月に開催される予定のWHO総会で正式に採択される見込みです。

 さてそのなかでゲーム障害がどのように分類されたかですが、ICD-11の大分類で「精神、行動、神経発達の障害」という項目の中にある中分類「物質使用症(障害)群または嗜癖(しへき)行動症(障害)群」の中で「嗜好行動症(障害)」として分類されています。

 ◇ICD-11が規定した「ゲーム障害」の中身

 ICD-11の中で規定したゲーム障害での「ゲーム」は、「オンラインゲーム」「オフラインゲーム」のいずれも含んでいます。ただ、実際に「障害」という状況にまで至る人が行っているのは、主に「オンラインゲーム」だと言われています。なお「オンラインゲーム」というのは、インターネットに接続した状態で、たいていはネットの向こうにいる他人といっしょに行うゲームのこと。「オフラインゲーム」とはネットに接続しないで行うビデオゲームなどを意味します。

 そして「ゲーム障害」の症状は、次のように記述されています。

 ▽ゲームへの参加を抑制できない状態(開始、頻度、強度、持続時間、終了、状況)

 ▽ゲームをすることの優先順位が高まり、他の生活上の興味や日常活動よりも優先される

 ▽悪影響が生じているにもかかわらず、ゲームへの没頭が持続、またはエスカレートする

 こうした症状が個人生活、家庭生活、社会生活、学業、職業、または他の重要な機能領域において著しい障害をもたらすほど「十分に重篤」で、「12カ月以上継続している」と、ゲーム障害と診断されます。

ゲーム障害は単純な依存・凝り性とは違う

 このような記述を読むと、多くの方は「ああ、単なるゲームへの依存ね」と考えるかもしれません。ただ、依存という言葉の捉え方は、一般の人の中では結構、個人差があると思います。

 例えば、毎日定時に学校や職場に現れ、学業や業務は淡々とこなすけれど、昼休みやちょっとした休憩時間にはスマートフォンやパソコンでゲームに没頭する。業務や授業の終了後の帰宅途中もゲームに興じ、自宅に戻るととにかく食事や入浴は軽く済ませて、あとはひたすらゲームをする。その結果やや寝不足で、授業や業務中に、時々あくびや集中力低下、居眠りをしてしまう。

 こうした行動パターンを聞くと、多くの人が「ゲーム依存」と聞いて納得するでしょう。

 ただ、この程度ならゲーム以外の原因でも起きます。例えば時差のある地域で行われるサッカー・ワールドカップの深夜中継の時期などにもありがちなことです。

 また、サッカー・ワールドカップなら、その時期が過ぎれば、熱中していた人は通常の生活に戻ります。前述のような程度のゲームへの没頭ならば、物理的にゲームを遠ざけることができれば、それほど問題なく元に戻ります。

 しかし、今回ICD-11のゲーム障害は、前述の定義をよく読めば分かりますが、ゲームへの没頭が「家庭や職場などに多大な影響をきたしてしまう」という意味で、一般の人が単に「依存」と考えがちな軽いものではありません。

 ◇脳機能にも変化を与えるゲーム障害

 実際、こうしたゲーム障害を持つ人は、脳機能の一部が低下していることが、最新の研究結果からも示されています。

 中国の四川大学付属華西医院のグループは、ネットゲーム依存を有する人の脳の磁気共鳴画像装置(MRI)画像に関する複数の研究をまとめた分析(メタ解析)から「ネットゲーム依存症の人は健常人と比べて脳の『前頭前野』の機能が低下している」ことを明らかにしています。

 脳の「前頭前野」は、人の創造性や、状況に応じた判断力、感情コントロールをつかさどる部分であり、いわば人の社会性や理性を形成している場です。その部分の機能低下とは「人が人でいられなくなる」ことを意味すると言っても過言ではありません。

 よく、ゲームに熱中して引きこもりになっている人をネット上で「廃人」とからかっているのを見受けますが、そのような状態は単なる言葉だけでなく科学的にも「廃人」という状態なのです。

 しかも厄介なのは、前頭前野は脳の中で最もゆるやかに発達する部分で、中高生ならば発達途上の状態です。そのような時期にゲーム障害に陥ると、成人期までに状況に応じた判断力などが養われないことになります。

 ◇早めに兆候を見つけて対処を

 ゲーム障害はまだ新しい病気でもあるため、治療方法が完全に確立されているとは言い難い状況にあります。国内でも治療に対応できる医療機関はごくわずかです。治療方法としてはアルコール依存症や薬物依存症と同じく、入院してスマートフォンやパソコンに全く触れない状態を作り、そこで患者本人が自身の思考や行動を振り返りながら、その論理的な誤りを医師とともに見つけて修正していく「認知行動療法」などが行われます。

 ただあくまでその治療法は、専門家ですら試行錯誤中ですし、完治までにはかなり長期間を要します。だからこそ、そこまでに至る前に兆候をキャッチして適切に対処する方が本人や周囲にとっても望ましいと思われます。

 具体的には、ゲームをしていない、あるいはできない状態になるとイライラして集中力が続かなくなる▽ゲームをする時間が次第に長くなりつつある▽ゲームに夢中になり、食事や入浴の時間を忘れてしまっている――などの兆候があったら要注意です。

 こうした時はまず無理のない範囲、例えば、通勤や通学の途中で「公共交通機関の中でもゲームをしている」場合は「その時間のみゲームをやめる」▽ゲーム時間の上限を決めてそれをしっかり守る――などの対策から始めましょう。【聞き手=ジャーナリスト・村上和巳】

関連記事Similar Posts:

カテゴリー: 気になるニュース パーマリンク