障害者差別事例-電動車椅子で飲酒ダメ? 「誤操作恐れ」 警察庁呼び掛け

東京新聞:電動車椅子で飲酒ダメ? 「誤操作恐れ」 警察庁呼び掛け:社会(TOKYO Web)より
電動車椅子で飲酒ダメ? 「誤操作恐れ」 警察庁呼び掛け
2018年11月24日 07時08分

 電動車椅子を利用中の飲酒を巡る警察の対応について、障害者団体が抗議を寄せている。警察庁が「操作を誤らせる恐れがある」などとして禁止を呼び掛けているためだ。団体は「不当な差別だ」として改善を要望。道交法上、車椅子は歩行者扱いだが、普及に伴って事故も増えており、識者の間でも見解が割れている。 (浅野有紀)

 「飲酒等して電動車いすを利用することは絶対にやめましょう」

 警察庁が二〇〇二年に作成し、ホームページで公開している「電動車いすの安全利用に関するマニュアル」の一文だ。飲酒による影響で、危険の感じ方が鈍くなったり、操作に支障を来したりするなどとして、飲酒の禁止を強く呼び掛けている。

 道交法は、電動車椅子も含めて車椅子や歩行補助車等を歩行者と定義している。高齢者が使う三輪や四輪の電動シニアカーも電動車椅子に含まれている。警察のマニュアルは、こうした車両と障害者用の電動車椅子を区別していない。

 これに対し、障害者の権利を訴えるNPO法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議(本部・東京)が八月、警察庁にマニュアルの飲酒に関する部分を削除するよう要望書を提出。電動車椅子の利用者のみに飲酒を禁止することは「道交法に矛盾しており、障害者差別解消法で禁じている不当な差別的取り扱いに当たる」としている。

 実際、電動車椅子を利用する障害者に対し酒類の提供を拒否する事例も起きている。滋賀県の大学非常勤講師頼尊(よりたか)恒信さん(39)は六月、ビール工場を見学した際に「電動車椅子の人は試飲できません」と伝えられた。抗議すると「試飲の時だけ手動に切り替えるなら」との条件でようやく認められた。

 日頃も、飲食店などで「飲酒運転になるのでは」と店主から心配されるという頼尊さん。説明して納得してもらえれば提供してもらえるが、拒否されることもある。「店の考え次第で、飲酒の権利が奪われるのはおかしい」と話す。

 警察庁によると、電動車椅子の交通事故は二〇一二~一七年で年間百五十五~二百十五件発生、うち利用者が飲酒した状態だったのは一~五件だった。

 警察庁の担当者は本紙の取材に対し「高齢化で電動車椅子の利用者が年々増える中、飲酒状態で電動車椅子を利用した人の死亡事故も発生している」として、マニュアルは変えない考えを示している。

◆差別に当たる

<障害者の権利に詳しい川島聡・岡山理科大准教授(障害法)の話> 法律で禁止されていない飲酒を店側が断るのは過剰ではないか。車椅子の人は自宅でしか飲酒できないことになり、差別に当たる。

◆事故多く危険

<車椅子事故を調査した縄井清志・つくば国際大教授(福祉工学)の話> 福祉用具が体の一部なのは理解できるが、高齢化で電動車椅子の利用者は増え、事故も多い。危険なので飲酒は控えたほうがよい。

◆試飲断られ店を提訴 「多様性受け入れて」

 電動車椅子の利用者に飲酒禁止を呼び掛ける警察の対応が議論を呼ぶ中、電動ではない車椅子でも、店側の判断で飲酒は危険だとして、酒類の提供を断られ、訴訟に至ったケースもある。 (浅野有紀)

 障害があり、車椅子を利用しているカナダ出身の料理研究家カトロウン・デニーさん(57)=東京都=は八月、西武池袋本店内のワイン販売店で、有料でワインを試飲したが、二杯目を受け取った際に別の店員から試飲をやめるように言われた。

 カトロウンさんは「人権侵害だ」として西武池袋本店に抗議書を提出。同店は、二〇一六年にワインの試飲会場で車椅子の車輪が他の客の足をひく事故があり、以降は車椅子利用者には試飲を遠慮してもらっていると回答した。

 カトロウンさんはこれまで、飲食店で飲酒を断られた経験はなく「五輪に向け多くの人が日本を訪れるというのに、多様性を受け入れられないようではいけない」と主張。そごう・西武とワイン販売店を相手取り、百七十万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴し、二十一日に第一回口頭弁論が開かれた。

 そごう・西武によると、西武池袋本店は八月から車椅子利用者に対しても、危険性を説明した上で客側が希望すれば提供している。

 警察庁によると、電動でない車椅子の交通事故は二〇一二~一七年に年間六十二~百一件発生。うち、利用者が飲酒していたケースは一~三件だった。

 警察庁は本紙の取材に対し「手動の車椅子でも、利用時の飲酒は危険」との認識を示している。

(東京新聞)

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