災害弱者避難、進まぬ「個別計画」 策定の市区町村1割

災害弱者避難、進まぬ「個別計画」 策定の市区町村1割:朝日新聞デジタルより
災害弱者避難、進まぬ「個別計画」 策定の市区町村1割
角拓哉、千種辰弥2018年11月6日11時24分

 総務省消防庁が、要支援者が避難する際の「個別計画」の策定率を調べたところ、全員分を済ませた市区町村は全体の1割余りの239だった。5日発表した。西日本豪雨から6日で4カ月になるが、河川が氾濫(はんらん)した岡山県倉敷市真備町では死者51人中、高齢者ら支援が必要な人が42人を占めていた。災害弱者を守る取り組みは途上だ。

 東日本大震災では、被災地の死者のうち65歳以上が約6割を占めたことから、国は2013年、災害対策基本法を改正。支援が必要な人をまとめた「避難行動要支援者名簿」の作成を市区町村に義務づけた。避難の実効性を高めるため、名簿の情報を共有し、支援者や避難方法を定めた個別計画の策定を求めている。

 消防庁によると、名簿の作成は6月現在、1687市区町村(97・0%)。このうち個別計画を全員分済ませたのが239、一部済ませたのが741だった。未策定の自治体も4割あるが、個人情報の共有について同意が得られない、支援者が見つからないなどの事情があるとみられるという。

計画作ったが…
 4年前の土砂災害で77人、7月の西日本豪雨で23人が死亡した広島市は2年前から、避難行動要支援者名簿を作っている。

 対象者は、介護が必要な高齢者や重い障害がある人など現在約3万2千人。そのうち情報の提供に同意した約1万4千人分を地域の民生委員や自治会長と共有し、土砂災害や洪水の危険区域内に住み、自力での避難が難しい人について、個別計画の策定を進めている。計画では、支援する人を決め、その連絡先や避難場所、避難時に配慮が必要なポイントなどをまとめている。体が不自由な人を避難させる責任の重さなどから、まだ一部の地域でしか作られていない。

 その一つが、約1400人が暮らす安佐南区のふじが丘団地だ。要支援者で情報の提供に同意した23人のうち、土砂災害警戒区域と特別警戒区域に住み、支援が必要な3人の個別計画を作成した。さらに区域外でも80歳以上で一人暮らしをしている8人の個別計画を独自に作った。

 しかし西日本豪雨では、個別計画を使った避難支援ができなかった。支援者に避難のサポートを要請したり、要支援者の避難を始めたりする明確な基準を決めていなかったからだ。団地内で土砂崩れは起きず、全員無事だったが、個別計画の作成に中心的に関わった恩地國男さん(72)は「団地全体に避難を呼びかけるので手いっぱいで、要支援者を支援することまで意識が十分に及ばなかった」と振り返る。

 このため自治会は10月の防災訓練で、支援者が要支援者に見立てた住民を訪ね、自宅から担架や車いすで集会所まで避難させる訓練をした。恩地さんは「非常時だけ動く仕組みを作っても、いざという時は役立たない。日常生活を支援できる地域の関わりが大切だ」と話している。(角拓哉、千種辰弥)

田中淳・東京大学総合防災情報研究センター長の話
 個別計画は地震時の避難生活支援や、事態が刻々と悪化する河川の氾濫(はんらん)などの際に効果が期待できる。ただ、支援する側の確保が都市部になるほど難しい。支援する側の負担や危険性も軽視してはいけない。支援を受ける側も早めの避難を決める、家具の固定を進めるなどが必要になる。また一つの対策だけで解決できるほど、要支援者の避難は簡単ではない。個別計画の策定自体が目的なのではなく、策定の過程でその地域が抱える課題を見つけることが大切だ。

関連記事Similar Posts:

カテゴリー: 気になるニュース, 福祉のまちづくり パーマリンク