福島第1処理水 基準値の約2万倍の汚染水を海洋放出か、前提危うく 再処理コスト増

福島第1処理水:海洋放出、前提危うく 再処理コスト増も – 毎日新聞より
福島第1処理水
海洋放出、前提危うく 再処理コスト増も
毎日新聞2018年9月29日 23時23分(最終更新 9月29日 23時43分)

 東京電力は福島第1原発の汚染水浄化後の処理水について、敷地内のタンクで保管する約89万トンのうち約8割の約75万トンで、トリチウム(三重水素)以外の放射性物質の濃度が国の排水基準値を上回っていたことを明らかにした。東電は処理水の再浄化を検討しているが、予定外の設備の新設や増設などが必要になり、廃炉コストも増大する可能性がある。【鈴木理之】

 廃炉計画では、敷地内のタンク増設は2020年までしか予定がなく、今後の廃炉作業への影響は避けられない状況だ。東電は、10月1日にある政府の有識者小委員会に報告し、小委員会が処理水の処分方法を改めて検討する。

 東電と政府はこれまで汚染水処理について、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」でトリチウム以外の62種類の放射性物質を除去でき、基準値以下に浄化できると説明してきた。性質が水に近いトリチウムだけは取り除けないが、薄めることで基準値未満にできるとして、汚染水浄化後の処理水の有力な処分方法に海洋放出を挙げていた。

 しかし今回の東電の発表によると、処理水計約94万トン(20日現在)のうち約89万トンを分析した結果、トリチウム以外で排水基準値を下回るのは約14万トンで、約75万トンは超過すると推定される。基準値超えの中には半減期が約30年と長く、体内に入ると骨に蓄積しやすいストロンチウム90も含まれており、サンプル分析では最大で基準値の約2万倍の1リットル当たり約60万ベクレルが検出された。

 基準値超えの原因として東電は、ALPSの不具合や、放射性物質を浄化する吸着材の交換時期が遅れたことなどを挙げた。

 東電は分析データをホームページには掲載していたが、積極的には公表してこなかった。

 松本純一・廃炉推進室長は28日、「説明が不十分で、反省している」と釈明した。

 この問題は、8月下旬に国民から意見を聞く公聴会の直前に明らかになり、参加者からは「議論の前提が崩れた」などと批判が相次いでいた。

漁業者は陸上保管主張
 処理水の海洋放出に反対している福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長(64)は「トリチウム以外にも基準を超す放射性物質があることは既に認識していた。陸上保管が前提という自分たちの立場に変わりはない」と冷静に受け止めた。

 8月下旬の公聴会で野崎会長は「海洋放出には国民の理解がなく、風評被害を招く」と反対し、陸上保管の継続を訴えた。東京電力が再浄化を検討していることに対し、「どうして再浄化という話が出るのか。その方が疑問だ」と述べ、海洋放出ありきの議論にクギを刺した。【乾達】

解説 浄化急いだ無理、裏目に
 福島第1原発の汚染水は、浄化後も約8割でトリチウム以外の放射性物質が排水基準値を上回っていたが、東京電力と政府が適切な情報公開をしてこなかった責任は大きい。技術的にも無理を重ねたツケが回ってきた面があり、廃炉作業のあり方に教訓を残している。

 データを東電はホームページに掲載していたが、一般の人が理解するのは困難で、トリチウム以外はALPSで除去できると説明してきた。2020年の東京五輪・パラリンピック開催を前に、国民や海外の人たちが「問題はトリチウムのみ」と認識するよう矮小(わいしょう)化を図ったと言われても仕方ない状況だ。

 また13年度に運用を始めたALPSは当初、浄化量を増やすために放射性物質の吸着材の交換時期を後回しにし、除去能力が下がっていた。当時は敷地内全体の放射線量を下げる目的があったというが、トリチウム以外の排水基準値超えという新たな問題を引き起こした。

 基準値超えが判明したストロンチウム90は、人の骨に蓄積する性質がある。「海洋放出が唯一の手段」と指摘する原子力規制委員会の更田豊志委員長も、健康への影響を考慮して処分に条件を付ける可能性に言及。「福島に真摯(しんし)に向き合う」とする東電と政府の姿勢が今、問われている。【鈴木理之】

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