減り続ける「頼りの献血」 iPS血小板へ期待できるの?

減り続ける「頼りの献血」 iPS血小板への大きな期待:朝日新聞デジタルより
減り続ける「頼りの献血」 iPS血小板への大きな期待
野中良祐2018年9月21日19時52分

 iPS細胞を実際の患者に使う臨床応用が、目、心臓、脳神経に続き、血液にも広がる。血液製剤は現在、献血によってつくられている。少子高齢化などで将来の不足が懸念されるなか、京都大チームによる今回の研究は、「献血頼り」の現状を変える可能性を秘め、医療現場の期待は大きい。

 「安全性が確認できれば一歩前進。(従来の献血システムを補う)選択肢を増やせればと考えている」。京都大の江藤浩之教授は21日、iPS細胞から止血作用のある血小板をつくって輸血する、今回の臨床研究が了承されたのを受け、将来の展望をこう語った。

 計画と並行し、チームと連携するベンチャー企業のメガカリオン(京都市)は、年内にも米国で、その後に国内で、iPS細胞による血小板製剤の製品化をめざして治験を実施する計画を進めている。2~3年後の製造販売承認を目標にしている。臨床研究は、その「第一歩」ともいえる。

 現在は、輸血で使われる血液製剤は、献血をもとにつくられている。しかし、血小板製剤は使用期限が採血から4日間と短く、長期間の保存が難しい。

 一方、献血者数は減少傾向にある。厚生労働省や日本赤十字社によると、1990年代には年間600万人以上いたが、2017年度は約473万人。16年度からも、10万人減った。

 将来にわたって血液製剤を安定供給するためには、日赤は22年度に約485万人、27年度に477万人の献血者が必要だと試算する。血小板製剤を含む血液製剤の不足は、多量の出血を伴う手術などを担う救急医療にも影響しかねない。厚労省の担当者は「献血の重要性は今後も変わらない」としたうえで「iPS細胞由来の血小板が実用化すれば、不足分を補うのに期待できる」と話す。

安全性とコストに課題

 ただし、課題もある。

 第一に、安全性だ。今回の研究では、1回の輸血に必要な血小板は100億~1千億個。血小板そのものは遺伝子を含む核をもたないため、腫瘍(しゅよう)化の危険性はないとされる。だが、iPS細胞から血小板製剤をつくる過程で、血小板に変化できずに残った細胞などが混じれば、腫瘍化のおそれはある。このため、製剤化する前に放射線を照射し、仮に混入していても死滅させることで、安全性を高めるという。

 iPS細胞をもとにした血小板については、品質の目安となる成分の量など、献血によるものと同じ水準に達していて、ウサギを使った実験では安全性や止血効果も確認しているという。とはいえ、実際に人に輸血したときの安全性や効果は未知数だ。血液は全身を流れるため、研究には慎重さが欠かせない。

 第二に、コストの問題もある。チームによると、臨床研究にかかる費用は、iPS細胞の作製などで約5千万円。将来的には、第三者のiPS細胞から血小板のもととなる細胞を大量につくって備蓄することなどで、コストを下げていきたいという。

 ヒトのiPS細胞ができて、10年が過ぎた。今年に入り、心不全、パーキンソン病と、iPS細胞による臨床応用への動きが相次ぎ、期待が高まる。ただし、現時点では「安全性」を確認する段階で、「有効性」の確認ができるまでには、まだ距離がある。

 一方、ほかの幹細胞を利用した製品が国内でも承認されている。海外では、iPS細胞と同様に体のあらゆる組織に変化できる「万能細胞」の一種であるES細胞(胚(はい)性幹細胞)を使った臨床応用が進むなど、競争も激化している。iPS細胞を使った再生医療が生き残れるかどうか、注視していく必要がある。(野中良祐)


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