障害者就労支援は収益事業? 突然の課税、NPOは困惑

障害者就労支援は収益事業? 突然の課税、NPOは困惑:朝日新聞デジタルより
障害者就労支援は収益事業? 突然の課税、NPOは困惑
村上潤治2018年3月5日05時39分

 NPO法人が手がける障害者向けの就労支援は、「収益事業」なのか。地域の草の根運動から取り組みを続ける団体は突然の課税に戸惑い、周辺からも反発の声があがっている。

 国税不服審判所に審査請求をした広島市のNPO法人「つくしんぼ作業所」。1976年に和田裕子理事長(74)らが障害児らの自主保育の会として始め、知的障害者が家にこもらず、地域で暮らせる場をつくろうと、2002年に作業所を開設した。

 今は男女18人がクッキーづくりや、折り鶴を広げて折り紙に戻す内職をしている。作業所の15年3月期の決算では、クッキーなどの売り上げは919万円で、経費を除く261万円を施設の障害者で分けた。

 国、広島県、広島市から受ける給付費が計2853万円で、施設長と職員ら15人の給与や作業所の家賃などを除いた251万円が作業所の所得とされた。法人税は37万円だった。あるスタッフは「車いすの人も使えるように、200万円でスロープを作ろうと思っていたのだが」と話す。

 課税の対象となるのは、就労が難しい人に働く場を提供する、こうした施設だけではない。

 地域の福祉作業所から始め、障害者宅にヘルパーを派遣している大阪府東部のNPO法人は、税理士と相談して法人税を払っていない。数年前、段差をなくすなどバリアフリーにするため事務所を移転。銀行から希望額が借りられず、支援者らから5千万円を借りた。思うように返済が進まず、経費などを切り詰めて何とか黒字を出し、そこから返済している。

 40代の理事長は「法人税は払いたい。ただ払うと借金がいつ完済できるのか不安だ。同じ事業をしても、社会福祉法人は非課税のところもある。営利を追求しないNPOと株式会社が、税の取り扱いで同じなのは違和感を覚える」と話す。

 税理士や会計士ら約500人でつくる「NPO会計税務専門家ネットワーク」も反発する。ネットワークは14年発行の書籍で「NPOの就労支援は非課税」と解説しているからだ。

 岩永清滋理事は「国税庁の一方的な解釈だけで、NPOの事業の内容は変わらないのに税が過去にさかのぼって徴収される。課税するのなら税法を整備するべきだ」と訴える。「全国重症児デイサービス・ネットワーク」(名古屋市)の鈴木由夫代表理事も国税庁の見解発表に「ホームページで対応するような問題ではない」と批判する。

 一方、名古屋大の高橋祐介教授(租税法)は「NPOの収益事業への課税は、他の法人との競争条件の公平を確保するなどの理由からだ。現在の法の枠組みでは、NPOの障害福祉サービスだけ特別扱いするのは難しい」と指摘する。

 つくしんぼ作業所の顧問税理士を務める桧崎(ひざき)晶子さんは「福祉を主体とするNPOも、企業のような節税策を考えなくてはいけなくなる」と心配する。(村上潤治)

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