流木でせき止められ、氾濫か 九州豪雨、専門家分析

流木でせき止められ、氾濫か 九州豪雨、専門家分析:朝日新聞デジタルより
流木でせき止められ、氾濫か 九州豪雨、専門家分析
2017年7月7日00時46分

 九州北部を襲った記録的な豪雨。根こそぎにされた木々が押し寄せ、川沿いの民家に突き刺さっている――。6日午後、本社ヘリ「ゆめどり」で、九州大の矢野真一郎教授(河川工学)と上空から被災地を見た。

 大分県日田市から福岡県朝倉市上空に差し掛かると、茶色の濁流と大量の流木が目についた。「かなりの土砂と流木があり、被害は深刻だ」

 日田市を流れる花月川では、JR久大線の橋が橋脚ごとなぎ倒されていた。矢野さんは「水だけの力ではこんな倒れ方はしないだろう。流木が橋でせき止められて水かさが増し、大きな力がかかったのではないか」。2012年7月に熊本、福岡、大分で計30人が亡くなり、2人が行方不明になった「九州北部豪雨」でも、この橋から約1キロ上流の橋で流木が引っかかり、水かさが増して氾濫(はんらん)。過去にも何度も水害が起きてきた。

 九州北部豪雨では4日間の総降水量が500ミリを超えた観測所も複数あった。今回と重なる被災地も多い。「5年前と同様、至る所で土砂災害が起きている」

 茶色に濁った花月川の上流の川をたどると、針葉樹が植林された日田市小野地区のあちこちで大きく山肌が崩れていた。「表層の土が滑り、沢に沿うように一気に土砂やスギの木が流れ出たようだ」

 福岡県東峰村では、道路が寸断され、大量の流木でつぶされた家もあった。川の砂防ダムで土砂はある程度せきとめられたものの、流木はその上を滑るようにして流れ出たとみられる。矢野さんは「土砂だけでは家が壊れなかったかもしれないが、流木は相当なエネルギーを持っている」と語った。

 朝倉市杷木地区付近では、濁流が川から広範囲に道路にあふれ、基礎部分が洗われた家屋が倒れそうになっていた。「土砂が混じった強い水流で護岸が崩れ、そこから水が流れ出している」と矢野さんは話した。

 九州北部豪雨で土木学会の調査団長を務めた小松利光・九州大名誉教授(河川工学)は「流木が橋にひっかかって水が通りにくくなり、氾濫してさらに流木が増える悪循環が起きたのではないか」と指摘する。

■避難指示、割れた対応

 福岡県と大分県に出された「特別警報」は、数十年に一度の災害の恐れが著しく高まっている場合に適用される。発表された時点で土砂崩れや浸水による甚大な被害がいつ起きてもおかしくない状況で、そうなる前に対応しておく必要があるとされる。九州豪雨で各自治体や住民はどう動いたのか。

 福岡県朝倉市では5日午後、1時間に100ミリ前後の猛烈な雨が降り出した。24時間の雨量が1カ月分の雨量より多く、観測史上最多を記録することになる。

 市は災害警戒本部を設置して幹部が協議を開始。午後2時10分に出た「土砂災害警戒情報」をきっかけに、約16分後、全域に避難勧告を出し、災害対策本部に格上げした。市幹部は「あまりにもすごい雨のなかで状況が深刻化していった。避難所の開設準備を進めていたが、急いで避難勧告を出すことにした」と気象庁の情報が大雨への備えに役立ったと話す。

 福岡県に「大雨特別警報」が出たのは午後5時51分。雨のピークを過ぎ、大半の地区に避難指示を出した後だった。森田俊介市長は「すでにひどい雨で、市としてはその時点でできることはめいっぱいやっていた」と振り返る。

 隣接する東峰村も、土砂災害警戒情報が出て間もない午後2時17分に避難準備情報を出し、同3時15分には避難を勧告。防災行政無線で各戸配備の「戸別スピーカー」と、各集落の屋外スピーカーに流した。

 ただ特別警報が出た後は避難指示を出さなかった。渋谷博昭村長は理由について「2回の放送で避難を始めてくれると考えた。夜の豪雨の最中に避難指示を出すとかえって危険だとも考え、悩んだ結果だ」と話す。

 大分県にも午後7時55分、大雨特別警報が出た。被害が大きかった同県日田市は午後4時前から断続的に避難勧告の対象を拡大。午後6時45分には市内9地区の約2万人に避難指示を出した。特別警報の約1時間前だった。

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