針葉樹の人工林が山間地の洪水被害を発生させているかを探り中

204.宮崎県鰐塚山針葉樹林の大崩壊(宮崎県内の全ての川が土砂で埋まる Ⅱ) – 針葉樹林に火を着けろ!(2006年)より
『田野
 宮崎市の西隣に、現在は同市と合併した旧田野町がありました。この南側に柳岳、並松山、朝陣野といった千メートル級の高峰が連なっていますが、その大山塊の最高峰が鰐塚山(1118.1m)です。
 さて、二〇〇五年九月に宮崎を通過した台風14号は、高千穂鉄道消失に象徴される大災害を宮崎県下全域にもたらしましたが、大規模な土砂崩れが頻発した北の椎葉村を圧倒的に上回る大規模な山腹崩壊(山体崩壊)を起こしたのが、この鰐塚山北麓の別府田野川流域でした。
 死者が存在しなかったためか、県外ではほとんど話題にもなりませんでしたが、見た事もないような規模の土砂崩れが起こっているのです。
 愚かな林学の走狗によって引き起こされた針葉樹林の問題についてはこれまでにも何度となく書いてきましたが、今回もこの樹齢の上がった危険極まりない針葉樹林地の実情を理解して頂くために気の重い論文を書くことになってしまいました。』
『管理された五〇年生の国有林地が崩落した
 「手入れをしないから駄目なんだ!」「管理された人工林は一切問題がない!」「間伐し、枝打ちをした林床は広葉樹林と同様に豊かだ!」・・・などと言ってきた全国の林業担当者の話がただの無知の産物か、とんでもない大嘘であることがこの一事を持って分かります。
 この鰐塚渓谷いこいの広場に崩落した林地の大半は国有林だそうですから、まず、コストを無視して適正な管理が行なわれてきたはずです。その立派なはずの五〇年生の人工林(全く売れないことの結果として通常の伐期を越えているのです)が、見るも無惨に崩落し、崩壊だけならばともかくも、大切な個人の財産に取り返しのつかない損害を与え、県民、国民の貴重な財産である自然渓谷を破壊し尽くし、延長数キロに亙って、数十~数メートルの深さの土砂で埋め尽くしたのです。豊かな広葉樹林を破壊して人工林に変え、崩落させることによって自ら破壊し、他人の財産に危害を加え、災害復旧工事と称して砂防ダムなどで金儲けを続けるのですから、彼らにとっては経済的には潤っているのかもしれません。
 もしもこれが林業だと言うのならば、それは一部の利権集団のためだけのものでしかなく、これが林学だとか言うのならばただのお笑い種に過ぎません。

危険極まりない長樹齢木林地  
 本来ならば八〇年代半ば以降は拡大造林政策が実り、戦後の造林地からは伐期を迎え始めた良質の木材が供給されるはずでした。しかし、現実は全く異なるものでした。相変わらず木材価格は低迷したままで推移し、今なお伐採や搬出の元さえ取れない状況が続いているのです。結局、林業は採算性を喪失し危険極まりない造林地だけが残されることになったのです。
 間伐、枝打ちが行われていない”もやし”のような木は、最悪、折れることによって台風にも林床を破壊するまでには至りません。しかし、管理され立派に育ったとされる長樹齢の大木が強風に煽られると、逆に、折れないために土砂もろとも根こそぎ倒れ、ドミノ倒しのように森そのものの崩壊に繋がり、ついには山自体が崩落するに至るのです。
 まず、今回の大災害は、三〇度を越えるような急傾斜にある大木の人工林がいかに危険なものであるかが証明されたと言うべきでしょう。
 もしも、乱暴な言い方が許されれば、まず、五十年生にまで育った大木が急傾斜地に置かれている事が危険なのです。腐葉土を作らず根を張らない人工林は、事実上、滑り台に乗っているようなものであり、この森は今後とも崩壊が約束されているようなものでしょう。事実、その事を十分に理解しているためか、現地を見ると、崩壊を免れた付近の造林地においても慌てて伐採が進められているようです。』

みどりのダムを検証 市民が緑のダムの保水能力を科学検証より
『●天然林と人工林の2ヶ所で実際に実験

 一方、データ解析とは別に、実際の森林での実験実測も行う。中根教授は、広島などの狭い区域の森林で、雨水の土中への浸透能力の実験をすでに実施している。その結果、柔らかい腐葉土の広葉樹林では針葉樹林の2~3倍の能力があることが分かっている。吉野川では100ha以上の広い森林で実施する。場所は吉野川上流域で「土質、傾斜が同じ」という条件で、植生が一方は人工林、他方は広葉樹林の2ヶ所の森林を選定する。そこに小さな測定用の堤を設け、降雨量と流量を長期間測定したり、地中の腐葉土にどれだけ雨や水が蓄えられ、浸透していくか、などを実際に実験する。

 スギ、ヒノキの人工林と、広葉樹や間伐の行き届いた混交林とではどのような差が出るか調べる。この現場は8月に現地踏査のうえ、決定される。スギなど針葉樹の落ち葉にはリグニンという物質が多く含まれている。リグニンは分解しにくいので土壌微生物が育たず、その結果、スギ林の土壌はやせて固くなり、降雨が土中に浸透しないまま表面を流れていくことが知られている。』

樹木の降雨遮断効果が洪水流出現象に及ぼす影響 (PDF 2003年)より
『試験林内における広葉樹林と針葉樹林それぞれの観測地点の概要図である。樹冠通過降雨を観測するための雨量計を広葉樹林内に 3 基、針葉樹林内に 2 基設置した。樹幹流量を観測するために雨量計を広葉樹林内樹木 2本に、針葉樹林内樹木 2 本に設置した。』
針葉樹林は里山の赤松であるし樹冠通過降雨の観測は洪水と無関係だ。

針葉樹の森|水の話|フジクリーン工業株式会社より
『山は緑で覆われているから保水力があるのではなく、団粒構造の厚い土壌となっているから保水力があるのです。木の根はこの土が雨で流されたり、風で吹き飛ばされないような役目をしています。広葉樹の根は地中の奥深くへ入り込みますが、ヒノキ、サワラ、アスナロ、ツガ、トウヒなどの針葉樹の根は地表の浅いところでネット状に横へ広がります。ヒノキやツガなどの森の中に作られた道は、人が歩いたり雨水によって落ち葉などが取り除かれるため、こうした根が地表に現われ、歩きにくくなっていることも多いのです。

 大地に根がしっかりと張っていれば、山は崩れることもなく、十分な保水力を発揮してくれます。最近は洪水被害がでるたびに、山の保水力が低下しているのではないかといわれています。

 原因としては乱開発や、広葉樹に比べ保水力が少ないスギ、ヒノキなどの人工林が多すぎるからではないかといわれています。確かに日本の国土の約67%は森林で占められ、そのうちの約40%は人工林です。針葉樹の落ち葉は広葉樹に比べ腐りにくく、分解されるまでに時間がかかります。しかし、場所によっては針葉樹林も広葉樹林も保水力にほとんど差がない場合があります。それは、地形や落ち葉の下の土質などが大きく関係しているからです。むしろ、人工林の手入れが十分に行われていないことに大きな問題があるようです。』

緑のダム – 地盤環境エンジニアリング株式会社(PDF)より
『v) 竹下敬司(2001)山の森と土と水、財団法人 福岡県水源の森基金
(九州大学名誉教授、農学部演習林長として長年森林水文の研究に従事=新藤注)
論点
「人工樹種を非難するのとは反対に、気に入られた広葉樹については、機能の買いかぶりがなされている場面も少なくないようである。スギ林を切り倒して広葉樹に植え替えれば、水源滋養機能が高まり、崩壊防止機能も高まる・・・と信じている人々の主張を前にして、か弱い下草の機能を強調しても、ムード的に理解してもらえない場合が少なくないようである」
「“下草との共存性”という基本的な機構を棚上げにして、ただ情緒的に、ある種の樹種だけを称える行為がなされていることが少なくない」
「最近は“みどり”の標語とともに、植生への関心が高まっているのであるが、植生機能の理解に関して、買いかぶり、見くびり、解釈の正誤等があって、必ずしも正当な情報が流れていない」』
朝倉市や日田市の被災者を前に言って見せろ!
『viii)只木良也(2002)「緑のダム」その意味するもの、PREC Study Report vol.8のうち、「6.水源かん養能力の高い森林」より抜粋
論点
「(前略)・・では水源かん養能力に優れた森林とはどんなものでしようか。前述のように、森林の水源かん養能力は、要するに土壌の水浸透能力にもとづきますから、簡単にいえば、団粒構造が発達した林、正常に落葉があり、その分解がスムーズな、したがって、植物現存量が大きく、低木層も発達し、土壌動物、微生物も豊富な林ということになります。それじや落葉が分解しやすく、団粒構造化も速い広葉樹林と決めてしまうのが一般です。間違いではないのですが、その一方で、スギなどの針葉樹人工林の能力はゼロのごとくに短絡的に結論されがちなのは危険なことです。なぜなら、針葉樹の落葉も、速度は多少遅くとも分解するのは当然だからです」
「適切に保育手入れされてきた壮齢期以上の人工林ならば、水源かん養能力も十分といえます。過去の水源林造成に使われたのは針葉樹(スギ)で、それで十分目的を達してきました」
「水源かん養能力を比較するのに、針葉樹人工林はまだ若い林が、広葉樹林はすでに成熟した天然林がモデルになりがちであったことも、広葉樹林絶対優位の印象を与えてしまうことになりました」
「水源かん養能に優れた森林の姿を一口でいえば、土壌の生成から考えて、いろいろな樹種が混ざり合った、すなわち多樹種混交の複層林、若齢林よりは壮齢期以上の林といえます」』
針葉樹林より広葉樹林が優れていることを認めている。

針葉樹人工林と落葉広葉樹林の洪水緩和機能の比較(PDF 2010年)より
第9章 結論及び今後の課題より抜粋
『成木川最上流域の水源涵養機能として洪水緩和機能と水資源貯留機能評価した。広葉樹林流域と針葉樹人工林流域の表層土層の孔隙特性に基づく雨水の貯留特性に変わりはないが、針葉樹人工林流域は根系層の発達により広葉樹林流域よりも雨水を速やかに渓流へ流出させる特性がある。この点から、針葉樹人工林流域のほうが広葉樹林流域よりも洪水緩和機能が劣っていると評価した。また、水資源貯留機能は、表層土層や山体地層へ貯留される量で議論することになるが、研究流域は表層土層に同程度貯留された水が当該流域に流出せず、森林の樹種の違いよりも山体地層の水文地質特性の影響のほうが大きいことから、森林の水資源貯留機能という評価を適用することは難しいと評価した。』

人工針葉樹林流域と落葉広葉樹林流域における水文特性の比較(PDF)より
『総流出量, 基底流出量ともに多い落葉広葉樹林流域において, 水資源貯留機能が大きいと言える. また, 合理式を適用し, 洪水流出に対するピーク流出係数fを算出し,洪水抑制効果について検証した. その結果, ピーク流出係数fの平均値は針葉樹林流域で0.22, 落葉広葉樹林流域で0.15となり(n=17), 落葉広葉樹林流域で常に小さく, 洪水抑制効果が大きかった. しかし, いずれの流域も高い洪水抑制機能を有していると言える結果であった. 』

針葉樹林流域と広葉樹林流域の 短期流出特性の違い – J-Stage(PDF 2009年)より
Ⅴ.結論より
『(2)総降水量が100mm未満(P<100mm)の降雨イベントでは、各流域ともに流出応答は相対的に小さく抑制されており、針葉樹林流域の流出ピークは広葉樹林流域よりも大きかった。総降雨量が100mm以上(P≧100mm)の降雨イベントでは、各流域の流出応答は顕著に大きくなることに加えて、針葉樹林流域と広葉樹林流域の流出応答には明瞭な差異がみられず、流出ピークがほぼ等しくなることが明らかになり、落葉広葉樹林の方が間伐遅れの針葉樹人工林よりも洪水緩和機能が高いとは判断できない場合があった。』


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