スポーツ嫌いでなぜ悪い! 久保ミツロウさん、能町みね子さん、ヒャダインさんが持論語った

スポーツ嫌いでなぜ悪い! 久保みねヒャダが持論語った – 一般スポーツ,テニス,バスケット,ラグビー,アメフット,格闘技,陸上:朝日新聞デジタルより
スポーツ嫌いでなぜ悪い! 久保みねヒャダが持論語った
聞き手・伊木緑2017年6月6日16時10分

 スポーツ嫌いで何が悪いのか。スポーツ庁の「スポーツ嫌いな中学生をいまの16%から半分に減らす」という計画について、体育嫌いが高じて、テレビ番組に「体育への恨みつらみ川柳」なるコーナーまで作った漫画家の久保ミツロウさん、文筆家の能町みね子さん、音楽家のヒャダインさんの3人に、大いに語ってもらった。

スポーツ嫌いダメ?国の目標波紋 「体育の恨み」影響も
 もともと記者が大好きだったこの番組は、フジテレビの深夜のトーク番組「久保みねヒャダこじらせナイト」。取材を申し込むと快諾され、「公開取材」の様子が5月上旬にオンエアされた。しかし、3人の思いは熱い。放送されたのはほんの一部で、取材は放送終了後のスタジオ、さらに楽屋まで続いた。

 話は体育への恨みのみならず、東京五輪をどう迎えるか、そして、好角家として知られる能町さん、フィギュアスケートを描いたアニメの原案も担当している久保さんの、スポーツを伝える表現者としての思いにまで広がった。

 ――この目標、どう思います?

 久保 あたかもスポーツ嫌いの子たちの意識が間違っているみたいになるのが嫌。「正しい教え方をすれば嫌いになるわけがない」みたいな空気はなーんにも役に立たない。

 ヒャダイン スポーツ好きな人はスポーツが楽しくて仕方ない、こんな楽しいことをしないのはもったいない、と思っているんでしょうね。

 能町 親切の押し売りですよ。そんなだったら勉強嫌いな子を減らした方がよっぽどいい。

 ヒャダイン そう! 勉強嫌いの人に「勉強楽しくないなんてもったいない。楽しいですよ」と言っても反感しかない。それを体育だったらいけると思ってる、その脳みそが筋肉でできてるんですよ!

 ――そもそも体育って、どうして嫌でした?

 ヒャダイン プレッシャーになるじゃないですか。体育の授業。恥かかされるし。それを含めて16%は体育が嫌いって言っているのに。それを半分に減らそうとしている人たちって、単純に「体育が苦手だから嫌いなんだろう」と思っているのでは。

 能町 運動が嫌いなんじゃないですよ。うまい人と一緒にやるから嫌いになるんですよ。

 ――でも、例えば数学が嫌いなのとは何が違うんでしょう?

 能町 数学はそんなに人前で恥かかないですからね。純粋に、数学が嫌いなんだと思うんですよ。できないから。

 久保 あと、たとえ点数を貼り出されることはあっても、みんなの前で読み上げることはないじゃないですか。でも体育に関してはみんなの目の前で……。

 能町 完全に恥をさらされているわけですよ。

 久保 特に球技とか、楽しい空気に乗れない自分が……。

 能町 そこもコンプレックスになってくる。そして球技だと、自分ができないとほかの人にも迷惑がかかる。自分を責める気持ちが生まれる。

 ヒャダイン 楽しめない自分が、みんなと違うんじゃないかという気持ちにもなるし。

 能町 数学ができないことで隣の子には迷惑がかからない。

 ヒャダイン 「応援」も嫌だ。みんなで熱く応援して、一致団結! 絆! とか、そういうのを押し売りされるのが嫌だ。一番厄介なのは、団結感を持てない自分が社会的にやばいんじゃないかと自分を責めちゃうんですよ。そういう思い、させないでよと。

 ――番組のコーナー「体育への恨みつらみ川柳」への投稿が多いのは、大人になるまでトラウマを抱えているから。なぜ「恨み」が残りやすいんでしょうか。

 能町 学校での嫌な思い出って、だいたい体育がらみなんですよ。

 久保 勉強って学校の枠の中のことだけど、運動はその先まで影響力があることのように続いちゃうんですよ。

 能町 レベル分けすればいい。完全に分けちゃっていいんですよ。

 ヒャダイン で、その低レベルな方の授業を見せないように。ぜったいバカにするじゃないですか。「あの投げ方見た?」とか。

 ――そもそも運動が苦手で困ったことあります?

 ヒャダイン 困ったこと、ないですよ。ガードレール飛び越えられないくらい。

 久保 スポーツの楽しみ方より命の守り方を教えてほしい。痴漢に襲われた時にどう(相手を)ねじ伏せられるかとか。

 ヒャダイン そしたら、こっちも遊びじゃないんだと、好きとか嫌いじゃなくて生き残るために必要なものなんだと思えるかも。

 ――そんななか、東京に五輪がやってきます。体育が嫌いだった皆さんにとって、五輪はいかがですか。

 久保 五輪は楽しみなんですよ。私が生まれてから東京に五輪が来るのは初めてだから、見に行きたい。

 能町 正直そうでもない。どうにか東京にいないで済まないかと考えてる。

 ヒャダイン そうそうそう。

 能町 なんかあるたびに渋谷のスクランブル交差点に集まるんでしょ。それがうんざりで。選手はなにも悪くない。みんながんばっているし、見ると面白いのも分かるんですけど、ただ「全員みんなで楽しもう」がだめなんですよ。

 ヒャダイン 「見てない」ということを当たり前に受け入れてくれる、選択肢として用意してくれる世の中がいいんですけどね。

 久保 私、単純にでかい大会だけ見たりするからね。サッカーワールドカップの決勝だけ見る、甲子園の決勝だけ見るとか。

 ヒャダイン 同調圧力が問題なんですよ。

 能町 「なんで見てないの?」って言われるのが嫌だ。

 ヒャダイン 「絆」って悪い言い方すると「同調圧力」なんですよ。

 久保 それは体育の授業が入り口になるんだなって思う。ほかの勉強は同調圧力と違う。個人戦だから。

 ――一方で、能町さんは好角家として知られ、解説でも活躍されていますし、久保さんはフィギュアスケートのファンで、フィギュアを描いたアニメ「ユーリ!!!on ICE」の原案も担当されています。体育嫌いだったのに、スポーツ界への貢献は大きいですよね。

 能町 見るのと自分がするのはまるで別のもの。娯楽として見てます。

 久保 例えばボクシングの漫画を描いている方はボクシングのチャンピオンになっていないけど描いている。その競技ができないことと、作品を描けないことはイコールではない。読者がその競技に興味をもって、本物を見たくなる、やりたくなる。その手助けになるものを描きたいと、すごく気をつけています。興味がない人に興味を持たせるところまで持っていくのは、その競技をやっていなかった人の方がむしろできるのかもしれないなと。

 元から相撲好きな人もいるでしょうけど、能町さんに興味をもったおかげで相撲に親しみがわくことだってある。人それぞれいろんな役割があって、その競技をやっている人が、自分の競技のすばらしさを伝えるのって案外向いていなかったりするんですよね。どうせわかんないだろうと思ってしまうせいか。スポーツに対して中途半端な嫌悪感、苦手な意識からのスタートだからこそ、なにかまた違った関わり方があるとずっと思っているんです。(聞き手・伊木緑)

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