駐屯地開設1年、活況と亀裂 台湾防衛最前線の与那国島

駐屯地開設1年、活況と亀裂 防衛最前線の与那国島 – 沖縄:朝日新聞デジタルより
駐屯地開設1年、活況と亀裂 防衛最前線の与那国島
小山謙太郎2017年3月27日22時33分
 海洋進出を強める中国を念頭に置いた防衛力強化の一環として、日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)に陸上自衛隊駐屯地が開設され、28日で1年。誘致への賛否が二分した島は、どう変わったのか。

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 今月23日、町立与那国小学校で卒業式があった。児童数は50人前後だったが、この1年で自衛隊員の子供たち13人が編入。全児童数が2割以上増えた計算で、複式学級が解消された。

 その前日、小高い丘を背に海原を望む与那国駐屯地では、隊員用の体育館や倉庫の建設工事が続いていた。島は今も建設業者らでにぎわう。「飛行機の席も民宿も予約が取りにくい。まだまだ続くよ」とレンタカー店長は話す。

 町が自衛隊誘致に動いたきっかけは、財政への危機感だった。小泉政権時の「三位一体改革」で、05年度の国からの地方交付税が1億円超カットされた。外間守吉(ほかましゅきち)町長(67)は「島民の多くは外国からの脅威を感じていない。人口の回復と税収の増加を当て込んだ」と語る。

 終戦直後の島は台湾との密輸が盛んで、人口は1万2千人を数えた。今はサトウキビ栽培や漁業が主要産業で、昨年2月には人口1500人を割っていた。島を二分した議論の末、一昨年の住民投票で誘致賛成が上回った。昨年3月以降、約160人の隊員とその家族あわせて約250人が転入し、人口は1715人(今年2月末)に増加。住民税と駐屯地の地代の計約5800万円が町の新たな収入になった。

 隊員たちは積極的に島に溶け込もうとしている。島の3地区に宿舎を建て、自治会の祭りや運動会に参加。駐屯地司令の塩満(しおみつ)大吾2佐(39)は「今後進む南西諸島への配備の模範としたい」と話す。

 駐屯地の中はどうなっているのか。昨年12月に日本記者クラブの取材団に加わり、訓練などを取材した。 島への武装勢力の侵入を想定し、分隊長の指示を合図に6人がスクリーンに向けて模擬銃を撃つ。「赤い家、散兵、集中射、撃て!」。装甲車が現れると、84ミリ無反動砲の発射音が響いた。土地が限られているため実弾演習場はなく、訓練には屋内シミュレーターを使う。実弾訓練は年に数回、熊本で行う。

 駐屯地には警備部隊と、東シナ海の中国軍などの動向を山上からにらむ高性能アンテナ5基などを運用する部隊が常駐する。環境保全を懸念する学者の指摘を受けて、駐屯地内に野生生物の生息空間となるビオトープもつくった。塩満司令は「航空機や艦船からの監視と違い、24時間定点観測できる」と話す。

 ただ島には亀裂が残る。カフェを営む猪股哲さん(40)は反対活動を続けるが、賛同者は減り、祭りや運動会に呼ばれなくなったという。「村八分のような状態です」。民宿を営む狩野史江さん(57)は「迷彩服姿の隊員が目立ち、雰囲気が変わったねとお客さんに言われる。島を離れた住民も多い」と話す。

 町の有権者約1300人のうち隊員とその家族で200票以上あり、町長選や町議選の結果を左右する可能性もある。反対派の田里千代基(たさとちよき)町議(59)は「島が自衛隊城下町になりかねない」と懸念する。

 有事の際、島民がどう避難するのかを示す町の国民保護計画は未策定だ。町は今月末から沖縄県と本協議に入り、計画を作ることにしている。

■進む「南西シフト」

 対中国を念頭に進む「南西シフト」。今月19日の防衛大学校卒業式で、安倍晋三首相は「南西方面では外国軍機による領空接近も増加している」と言及した。稲田朋美防衛相も3日の記者会見で「南西諸島などをめぐる状況を考えると、自衛隊の施設を置いていくことは重要だ」と述べた。

 防衛省・自衛隊は与那国島への陸自配備を皮切りに、宮古島市と石垣市にも警備部隊とミサイル部隊の配備を計画。昨年、両市に正式に要請した。新年度予算案では、宮古島市への陸自配備に向けて土地取得費や整備費など、約310億円を計上している。

 尖閣諸島がある石垣市では「中国公船が領海侵犯を繰り返し、危機感がある」と語ってきた中山義隆市長(49)が昨年末、配備手続きの開始を表明。宮古島でも、受け入れを表明した下地敏彦市長(71)が今年1月に再選された。

 だが、両市の反対派住民たちは「防衛省や市が建設地など具体的な配備計画を明らかにせず計画を進めている」として反発する。

 防衛省による住民への説明会は石垣市で昨年5月、宮古島市で昨年10月を最後に開かれていない。いずれの説明会でも中国の脅威を強調したほかは、経済効果や災害時の救助活動の紹介に力点が置かれた。

 「石垣島への自衛隊配備を止める住民の会」の上原均事務局長(63)は「基地があるから攻撃されるリスクもあるのに、国は不利な点を説明しない。これでは議論が深まらない」と語る。(小山謙太郎)

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 〈南西シフト〉 政府は2013年の新防衛大綱で「南西地域の防衛態勢の強化、防衛力整備を優先する」と明記。500~800人規模の部隊を鹿児島・奄美大島、沖縄・宮古島、石垣島に配置。離島を侵略された場合、戦闘機や護衛艦の支援を受けて上陸する「水陸機動団」も来年3月に長崎県佐世保市に新設される。

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