世界最古の釣り針、沖縄で出土 旧石器時代に貝を加工か – 沖縄

世界最古の釣り針、沖縄で出土 旧石器時代に貝を加工か – 沖縄:朝日新聞デジタルより
世界最古の釣り針、沖縄で出土 旧石器時代に貝を加工か
上原佳久、編集委員・中村俊介2016年9月20日05時00分
 沖縄県南城(なんじょう)市のサキタリ洞(どう)遺跡で、世界最古となる2万3千年前の釣り針が見つかった。県立博物館・美術館(那覇市)が19日、発表した。素材は貝。国内初の旧石器時代の漁労具で、人類が少なくともそのころから海や川の幸を利用する技術を持っていたことをうかがわせる発見だ。

 釣り針は幅1・4センチ。地表から1メートルほどの層で見つかった。この層の木炭を放射性炭素年代測定をもとに調べた結果、2万3千年前のものと判明した。未完成品もあり、同じころのものと推定される。

 ニシキウズ科の貝の底部を割り、石などで磨いて加工したらしい。同じ層にはブダイ科の魚やオオウナギの骨もあった。この遺跡からはこれまで穴を開けた貝製ビーズも出土し、それに繊維質のひもを使ったとみられることから、釣り針にもひもを結び、魚をとったと考えられるという。

 県立博物館・美術館によると、貝製の釣り針は東ティモール(東南アジア)のジェリマライ遺跡でも1万6千~2万3千年前とされる先端部が出土しているが、今回見つかった釣り針は年代がより確実で保存状態もよいという。国内では夏島貝塚(神奈川県)の1万年ほど前のイノシシの骨製のものが最も古かった。

 地表から2メートルほどの層では幼児の肋骨(ろっこつ)などが出土し、3万年前のものとみられる。那覇市の山下町第一洞穴遺跡の人骨(3万6500年前)に次ぎ、国内で2番目に古い。

 また、モクズガニや、カワニナといった貝類の遺骸が1万3千年前から3万5千年前まで途切れることなく堆積(たいせき)していた。焼けた跡があり、食用にした可能性がある。

 旧石器時代の沖縄地域は食料となる動植物が限られ、人々は長期間存続できなかったとする仮説があるが、同館の藤田祐樹主任は「人々は陸上の資源が乏しくても豊かな水産資源を利用する技術を持ち、継続的にここに居住していたことが裏付けられた」と話す。

 国立科学博物館や東京大総合研究博物館などが分析に協力した。調査成果は米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載されている。

 県立博物館・美術館は2009年からサキタリ洞遺跡を発掘中で、旧石器時代の貝器や人骨、沖縄最古の土器などの発見が相次いでいる。(上原佳久、編集委員・中村俊介)

■人類の適応力を証明

 沖縄で相次ぐ旧石器時代の新発見は、旧石器人が島の厳しい環境に対しても強い適応力を持っていたことを次々と証明している。

 海で閉ざされた小さな島々は食料事情も良いとは言えず、人類が子孫を残していくには苛酷(かこく)な生活環境と思われてきた。全身骨格で有名な港川人(八重瀬町、約2万年前)さえ絶滅説があったほどだ。

 ところが、サキタリ洞遺跡で2万年前の貝製道具や沖縄最古の土器(約9千年前)が確認され、石垣島の白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴でも旧石器人骨十数体が見つかるなど、人類が島に順応して水産資源を利用できる生存戦略を持っていたことが明らかになりつつある。今回、モクズガニやカワニナの採集が、その体長や化学分析から秋に集中することがわかり、人々が“旬”を熟知していたことをうかがわせる。

 出土した幼児の骨ははるか3万年前もの昔、人々が海を渡って沖縄にたどり着いていた事実を物語る。彼らはどこから来たのか。

 かつて先島地域(宮古・八重山諸島)のシャコガイ製貝斧(かいふ)にフィリピン先史文化との類似が指摘されたこともあるし、日本人の祖先の南西諸島北上説も唱えられた。近年は港川人の姿がオーストラリア先住民に近いとの見解もある。今回の釣り針は東ティモールの出土品に並ぶ古さだという。

 サキタリ洞の釣り針は、沖縄で自然発生したのだろうか。それとも海のかなたの南方世界と接点があるのだろうか。壮大な謎解きの材料は出そろいつつある。(編集委員・中村俊介)

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