原因と結果-対テロ戦「日本も当事者に」 バングラ援助、一部で中止

対テロ戦「日本も当事者に」 バングラ援助、一部で中止:朝日新聞デジタルより
対テロ戦「日本も当事者に」 バングラ援助、一部で中止
伊藤賢、坂本進 四倉幹木2016年7月4日12時07分
 日本人7人がダッカのレストランで殺害された事件。かつて「アジア最貧国」と呼ばれたバングラデシュの人たちを援助してきた日本の団体の間には、活動を一部中止するところも出てきた。「日本人も『対テロ戦』の当事者とみなされている」。懸念の一方で、「亡くなった人たちの思いを無駄にしたくない」と語る援助関係者もいる。

 電気の供給や子どもの教育支援に30年以上取り組んできたNPO法人「関西バングラデシュ・プロジェクト」(神戸市)は、年1、2回続けていた現地への訪問を当面、中止することに決めた。30回以上は訪れたという代表の松永幸子さん(76)は「穏健なイスラム教国という印象があったので信じられない思い。本当に親日的な国で、日本人が行くとみんなが喜んでくれた」。会費や寄付金を集めて現地に送る取り組みは続けるという。

 20年前から地下水の汚染問題に取り組む宮崎市のNPO「アジア砒素(ひそ)ネットワーク」(AAN)の横田漠理事長(73)も、「現地で活動しにくくなるのではないかと心配」と話す。ダッカと地方都市1カ所にそれぞれ日本人スタッフが1人ずつ駐在している。「帰国させるかは本人とも相談しながら決めたい。こんなことは初めてで戸惑っている」

 数年前まで日本の高校生や大学生向けに現地へのスタディーツアーを開催していたが「今の状況だと絶対に無理」。日本の学生をインターンとして現地で受け入れる事業も、今年は事件を受けて中止するという。

 「おもてなしの心が強く、外国人を客として大事にしてくれる国民なのに」。親元から離れて使用人として働く少女らに教育を受けさせるプロジェクトを進めるNPO「シャプラニール」(東京都)のダッカ事務所長、藤崎文子(ゆきこ)さん(48)も残念がる。

 昨年、イタリア人と日本人の援助関係者が相次いで殺害された事件以来、ダッカ市内での公共交通を使った移動や、地方への出張を控えてきた。治安への不安からだ。出張ができないのは、活動の質を保つうえで大きな痛手だという。

 昨年1月、安倍晋三首相が「ISIL(『イスラム国』の別称)がもたらす脅威を少しでも食い止める」として、イスラム国(IS)と向き合う周辺国の難民支援などに2億ドルの資金協力を表明した時が「大きな転機だった」と藤崎さんは感じる。「あれから日本人も『対テロ戦』の当事者とされ、テロの標的にされている。テロをなくすためには力ずくではなく、貧困の解消などに知恵を絞るべきでは」

 一方、ダッカに滞在するJICA関係者の男性は「こういう時だからこそ発展に貢献できるよう今後も尽力したい」と力強く語った。仕事仲間や友人のバングラデシュ人から「無事か」「何かできることはないか」「恥ずべき事件で申し訳ない」と次々と電話が来た。「本当に心強く、うれしかった」と話す。

 JICAダッカ事務所からは3日朝、日中も含め不要不急の外出を当面しないよう、連絡があった。「身動きは取りづらくなると思う。外食はもうできないかも」と話す。それでも「亡くなった7人もバングラの人たちのために熱意を持ってこっちに来たと思う。彼らの思いを無駄にしたくない」。(伊藤賢、坂本進)

■穏健なイスラム教国、ISの影響じわり

 2007年からバングラデシュに住み、現在はダッカでコンサルタントとして日本企業の現地進出を支援している田中秀喜さん(41)は「イスラム過激派によるとみられる殺人事件はあったが、外国人が集まる場所を狙った大規模なテロが起きるとは想像もしなかった」と話す。

 田中さんによると、バングラデシュでは昨年、日本人とイタリア人が殺害された事件のほかにも、国内のイスラム過激派から「反イスラム」とされたブロガーが殺害される事件が相次いだ。昨年9月にイタリア人が殺害された現場は、今回襲撃されたレストランから数百メートルしか離れていないという。

 一方で、政府は最近、治安対策を強化していた。外国人の出入国管理は厳重になり、レストランのあるグルシャン地区でも警備にあたる警察官が増えたという。「治安強化で、昨年のような事件はもう起きないのでは、と思っていた」

 ただ、穏健なイスラム教国ながら、ISの影響をうかがわせる出来事もあった。ISの宣伝動画にバングラデシュ人と思われる戦闘員が映っていたり、昨年末には北部の町で、ISのシンパになるためのマニュアル本を配っていたグループが摘発されたりしていたという。

 「治安の良さが日本企業の進出を後押ししていた。だが、ISの巧みな情報発信の影響を受けやすい人も一部にはいる。ISの今後の動向が心配だ」と田中さんは話す。(四倉幹木)

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