リニア工事、沿線で募る懸念 村に1日1千台のトラック

リニア工事、沿線で募る懸念 村に1日1千台のトラック:朝日新聞デジタルより
リニア工事、沿線で募る懸念 村に1日1千台のトラック
菅沼遼、床並浩一 山田雄一、大塚晶2015年12月2日20時33分
 2027年に東京・品川―名古屋間が開通する予定のリニア中央新幹線は着工からまもなく1年を迎え、今月中旬にはトンネル掘削に向けた工事も始まる。沿線自治体の期待は大きいが、生活環境や自然への影響を懸念する声はなお各地で上がる。

 南アルプスのふもとにある山梨県早川町は、人口約千人。大半が山林で、日本で最も人口の少ない町として知られる。

 町民を対象に10月末にJR東海が開いた説明会で、トンネルを掘削するための工事が12月から始まることが明らかになった。リニア関連ではすでに品川、名古屋の両駅で工事が進んでいるが、実験線を除けば沿線での工事は初めてとなる。

 まず資材置き場などを整備。来年3月から非常口のトンネルを掘り始め、本線の掘削は来年秋からになる予定という。230万立方メートルの建設残土が発生し、ピーク時には片道で1日465台のトラックが通ることなどが住民に伝えられた。

 出席した会社員の男性(29)は「幼い子どもがいるので、安全面で心配です」と語る。また、観光業の男性(66)も「狭い道路をトラックが数珠つなぎで走るようになる。秘湯や自然が売りのこの地域で工事が10年以上も続けば、観光業者は倒産してしまう」と心配する。

 リニアは品川―名古屋間の286キロのうちトンネルが86%を占め、5680万立方メートル、東京ドーム46杯分の残土が出るとされる。

 早川町と同じく、「日本で最も美しい村」連合に加盟する長野県大鹿村でも1日最大1700台余のトラックが走る計画が示され、住民が猛反発。JR東海は村内に残土の仮置き場を造ることなどを追加で提案したが、それでも1日に1千台は超えるという。

 飯田市の西隣に位置し、「昼神温泉郷」で知られる阿智村は独自に「社会環境アセス委員会」を設け、粉じんによる大気汚染や生活、観光への影響を調べている。発案者で委員長の岡庭一雄・前村長(73)は「JR東海の環境アセスメント(影響評価)は事業推進のためのもので、リニア工事が地域に及ぼす社会的な影響はほとんど考慮されていない」と批判する。年内に報告書をまとめて住民に示し、議論に役立てる。

 昨年6月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の生物圏保存地域「エコパーク」に登録された南アルプスは25キロに及ぶトンネルが貫かれることになり、環境への影響に懸念がある。

 「トンネルで地下水脈が分断される」「JRは環境アセスに3年かけたと言うが、これだけ広大な場所を本当に調査したのか」。11月14日、反対派が静岡市で開いた集会ではこうした声が相次いだ。

 影響の一つが、南アルプスから駿河湾に注ぐ大井川で流量が毎秒2トン減ると予測されていることだ。JR東海は、中下流域の流量を確保するために新たに11キロの導水路を造り、トンネルの掘削で生じた湧水(ゆうすい)を大井川本流に戻すという計画を提案している。しかし一部の研究者は「上流の沢が枯れ、生態系が変わる」と難色を示しており、静岡市の担当者は「納得のいく理解が得られるまで時間がかかりそうだ」と話す。

 市民団体「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」は「建設費は5兆5千億円から膨らみ、いずれ税金が投入される」と指摘。来春をめどに、国交相による認可取り消しを求める行政訴訟を起こす予定だ。

 JR東海広報部は「工事の安全や環境の保全、地域との連携を十分重視して計画を着実に進めていきたい」と話している。(菅沼遼、床並浩一)

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