頸髄損傷者(脊髄損傷者)のアウトカム

第Ⅲ部
外傷性脊髄損傷のアウトカム
-期待される成果:あなたが知るべきこと-

原注:このガイドブックは1999年に刊行した「脊髄損傷の臨床ガイドライン」の『脊髄損傷のアウトカム』〔p151;PVA文献6〕の科学的・専門的知見に基づいている。

Expected Outcomes:What You Should Know
―A Guide for People with Spinal Cord Injury
:Consumer Guide
Consortium for Spinal Cord Medicine 編
2002年、原著刊行
発行:Paralyzed Veterans of America
翻訳〔要約および本文〕 赤十字語学奉仕団:

第Ⅲ部 はじめに

【編集部より】 「脊髄損傷のアウトカム」の原著は損傷レベル別のC1~S5の8分冊からなっている。各分冊の冒頭はすべて共通しているため、「はじめに」としてここにまとめた。また「C1-3のアウトカム」の表2「問題と行動」も各分冊で共通のためp108のみに掲載した。米国の社会資源のリストについては割愛した。

このガイドは誰が読むべきか?

・ 脊髄損傷完全マヒのC1-S5の損傷レベルの人
・ 家族、友人、ケアワーカー、その他の介助者
・ ヘルスケアの専門家、特にリハビリテーションスタッフ
・ ケアマネージャーおよびサービスや機器の提供者
 この患者向けガイドは、現在、医療専門家のために利用可能な外傷性脊髄損傷のアウトカム(帰結)に関する臨床ガイドラインに基づいている。

なぜこのガイドは重要なのか?

 これは、障害レベルに応じて成果を説明する8分冊のガイドのシリーズで、いずれも完全マヒのケースである。
 ガイドのこのシリーズの目的は、脊髄損傷の異なるレベルにある人々が合理的に毎日の機能に期待できるものを記すことにある。この情報は脊髄損傷者や彼らをケアする人々が現在と未来の計画を理解することの手助けとなる、例えば――
・ 脊髄損傷者は受傷後1年で、何をすることを期待できるか?
・ 家庭での日常生活、仕事、コミュニティにおいて、どのような介助が必要か?
・ どんな機器が脊損者の自立を助けるか?

 脊髄損傷は脊髄が損傷した結果、運動や感覚が失われる。脊髄は、脊柱を構成している硬骨を通り抜ける神経の束である。機能の喪失が発生するには、脊髄が完全に切れる、もしくは引き裂かれる必要はない。
 一方、人は”彼らの背中や首を壊す”ことができ、脊髄の周りの骨(椎骨)だけが破損した場合、脊髄には影響しなかった場合がある。椎骨が安定化された後、このような状況だとマヒが発症しない可能性がある。
 脊椎と呼ばれる骨のリングは、脊髄を囲んでいる。これらの”背骨は”脊柱を構成している。脊髄の高位の損傷は、より多くの個人に、日常の活動の制限が発生する。
 首の椎骨は頚椎と呼ばれている。トップの椎骨はC1、次はC2などである。頸髄損傷は通常、両腕と両脚の機能の喪失の原因となる(英語ではtetraplegia/quadriplegiaが共に四肢マヒを意味する)。

アウトカムとは何か?

 私たちが脊髄損傷後の”アウトカム”について話すとき、多くのことを意味している。
・ 運動/感覚機能の回復
・ 一般的な毎日の機能を実行する能力
・ コミュニティにおける社会生活
・ 全体的な生活の質
 アウトカムとは、脊髄損傷のようなイベントによって、あなたに起こる変化である。これらは、以下の方法で記述するこ とができる――
機能障害のアウトカム-健康上の問題や病気
活動のアウトカム-基本的なタスク(呼吸、食事、着替え、移動)を自己管理するために。これらの活動は、特別な医療機器や他の人からの助けのあるなしに関わらず行うことができる。
参加のアウトカム-あなたの友人、パートナー、親、学生、従業員、あるいはボランティアのようなコミュニティの人々と交流の方法。
生活満足度のアウトカム-自分自身と生活の質をどのように見るか、あなたからの報告。

 このガイドは、活動のアウトカムに主に重点を置いてる。上記の他のアウトカムは、一人ひとりに説明することは困難である。あなたは損傷の後にあなた自身の興味を追求する方法を考える必要がある。あなたが参加できる方法は、これらが含まれるかも知れない。
・ 他の人々と(自分で、電話、またはメールにより)繋がっていること。
・ あなたの物理的な環境とライフスタイルを変更し、あなたの仕事をできるようにする、学校に行くなど楽しい時を過ごせるようにしよう。
・ あなたの友人、家族や他の人などに提案してもらう。
・ 活動的に、健康で満足して生活するプランを立てること(あなたの医療チームに問い合わせること)。
・ 学校に戻り、あなたの勉強を続けること。

このガイドは教育用のツールである!

 あなたの医療提供者と、損傷から1年後に期待している活動について気軽に議論しなさい。
 この患者ガイドの勧告は脊髄医学コンソーシアムの臨床ガイドライン(CPG)で用いられた科学的研究に基づいている(PVA文献6参照)。



C1・C2・C3のアウトカム
-頸髄C1・C2・C3損傷者のために-

受傷後のアウトカムに影響するのは何か

 脊髄損傷は多くの変化をもたらす。その変化は多くの要因によって決まる。脊髄と呼ばれる神経の束の各部位が、体の各部位をコントロールしている。
 「C1-3」とは何か、あなたはもう分かっているとしても、友人や家族の人たちにはもう少し説明があったほうが分かりやすいだろう。
 脊椎には4つの部分、すなわち、頚椎(C)、胸椎(T)、腰椎(L)、仙椎(S)がある。脊椎はまた、椎骨と呼ばれる33の骨からなるものである。各椎骨はそれぞれ1つの脊髄神経と繋がっている。アルファベット1文字と数字1つとを組み合わせた簡単な表記方式が脊髄損傷の省略記号となる(図1)。アルファベットは脊椎の部分を、数字は損傷した脊髄神経を示している。
 損傷レベルが、体のどの部分の筋肉や感覚器が機能を失うかを決定する。完全マヒか不完全マヒかによって、運動・感覚機能の全てが失われるのか一部が失われるのかが決まる。このガイドはC1-3以下の完全マヒ者に向けたも のである。

図1 レベルC1-3 感覚の図解
図1 レベルC1-3 感覚の図解

 頚部(首)の損傷は、たいていの場合、四肢マヒ(テトラプレジア)を引き起こす。C1-3の完全損傷者は話すこと・飲み込むこと・頭部の動きをコントロールすることはできるが、両腕と両脚を動かすことはできない。咳や呼吸をすることができなくなる。レベルC1-3損傷には人工呼吸器の使用が必要となる。
 C1-3の脊椎の受傷後でも機能する主要筋群の位置を、同じく図1に示した。主要筋群は以下のとおりである。
 胸鎖乳突筋 (首を回しひねる)
 頚部傍脊柱筋 (首を伸ばす)
 頚部副神経 (話し飲み込むのを助ける)

 アウトカムに影響するその他の要因は以下のとおり――
 受傷前の健康状態/現在の健康状態全般と体格・年齢/関連する損傷/二次的合併症/家族や友人の支援体制/経済状態/自宅や職場の環境(アクセシビリティ、受け止め方)/医療・リハビリサービスへのアクセスや利用のしやすさ/地域活動への参加。

C1-3損傷後の活動のアウトカムの予測は?

 表1は呼吸、食事、更衣、移動などの生活活動の表である。各活動に対して、C1-3損傷者の多くが受傷1年後に合理的に予測できることは何かを説明している。この表はあなたとその医療チームが短期、長期の目標を立てる手助けになりうる。
 「合理的に予測する」とはどういうことかを理解することは重要である。表1は平均値を用いている。実際には、同じレベルの損傷であっても人によってアウトカムは異なる。アウトカムは各人に特有なものなので、医療チームは、各人に合った目標の設定を手助けすることができる。
 表1のアウトカムは、特定の活動に対する介助の必要性について説明している。表は3つのカテゴリーからなる。すなわち、I:自立、S:一部自立、T:全介助である。移動及び意思疎通などの活動には、1つ以上のカテゴリーが表示されている。

重要] 表1は、C1-3完全マヒに対する予想アウトカムの一般的な基準である。基準は、努力目標であって、達成を保証するものではない!
 表中の活動には、すべてのC1-3損傷者に必ずしも当てはまらないものや、達成できないものもある。脊髄損傷者によっては、見積った時間枠内に表1の目標を達成できない場合や、逆に、表の目標を超える場合もある。
 ここに挙げたアウトカム予測は、研究と臨床事例に基づいているが、他の脊髄損傷者に基づくものであって、あなた自身のものではない。

表1 アウトカム予測――レベルC1-3の完全損傷
表1 アウトカム予測――レベルC1-3の完全損傷

 脊髄損傷C1-3の場合は、首をいくらか動かすことができるかもしれない。しかしながら、アウトカムは人によって異なる。 C1-3脊髄損傷者のほとんどは、呼吸するのに人工呼吸器の助けを必要とする。平面から平面への移乗には介助者の全介助が必要である。どの機器が利用できるか、環境のアクセシビリティはどうかによって、介助の程度は異なる。たとえば、アゴで操作する電動車いすやハイテク・コンピュータのアクセスのある場合、移乗や会話は自立が可能となることもあるが、その設定には介助が必要だろう。
 特定の活動に必要とする、あるいは希望することがある特別な機器も表に示した。リハビリ治療チームが異なる提案をすることもある。アウトカムと同様、機器の必要性も時間の経過とともに変化することがある。

専従介助の利用の可能性について、C1-3 損傷受傷者の場合は、家事を含む24時間の介助が予測される。
C1-3損傷について、受傷者は、身の回りの世話に関して、介助者が知っておく必要のあるすべてのことを説明できなくてはならない。実際には、日常生活のすべての行動を行うのに介助が必要であり、必要最低限の世話や安全性の確保にも介助を必要とするだろう。
脊髄損傷者や介助チームが時々機器を点検して、機器が正常で正しく動くかを確認するのは良いことである。加齢に伴い、機器の必要性が変わるかもしれない。リハビリスタッフは、ニーズの変化にあった新しいデザインや製品について最新情報を脊髄損傷者に提供することができる。
自宅や職場の改造は、可能な限り多くのことをするために必要となるだろう。安全性とアクセシビリティを十分に考慮することが大切である。自宅と職場の環境を評価してもらうために、アクセシビリティを専門とするリハビリセラピストへの紹介を、リハビリスタッフに頼もう。これによって、可能な限り多くのことができるような、建築やその他の有効な改造を行うことができるだろう。

 活動は時間の経過とともに変化することがある。活動がうまくできるようになったり、できる活動の数が減ったり、あるいはその両方のこともある。日頃の活動状況を定期的に検討するため、医療チームと連絡をとっておこう。医療チームは様々なサービス、介助、機器、修繕によって、脊髄損傷者がニーズを満たす手助けをすることができる。

表2 問題と行動

表2 問題と行動
〔注記〕表2は「C1-3のアウトカム」だけでなく、C1-T9までの8点の冊子に共通して掲載されているもの。
    日本の社会資源に関しては『脊髄損傷者の社会参加マニュアル』〔せきずい基金、2008年刊)などを参照。

 機能の変化や改善は突然起きるものではないことを知っておくことは重要である。リハビリは一生続くものである。リハビリ施設を出たら終わるというものではない。脊髄損傷後の生活を乗り切るためには、勇気と参加意欲とチャレンジ精神が必要であろう。

 脊髄損傷は、必ずしも生活満足度を減らすものではない。生活満足度とは、「私が選んだ基準に照らして私の生活はうまくいっているか?」との問いに対する答えである。生活満足度は、その人の脊髄損傷のタイプやレベルと特に強い関係はない
 例えば、脊髄損傷を受けていない人や別のタイプの脊髄損傷者よりも、生活に満足しているC1-3損傷者がいる。人生の見方は、時の経過とともに変化することに気がつくだろう。ある人が述べているように、「脊髄損傷後の私は変わったが、かつての自分と比べると良くなっている。だから昔の姿の自分を訪ねてみたっていっこうにかまわない」。満ち足りた人はいっそう自分を大事にして、健康を維持し、合併症を防ぐということが知られている。

 個人の満足は、コミュニティにおける他人との関わり方とより大きな関係がある。したがって、交友関係を築く能力、つまりよいパートナーや学生や従業員やボランティアになる能力は極めて重要である。
 頸髄損傷者が身の回りを管理し、コミュニティに出て行き、時間を生産的に使うためには努力が必要である。参加によるアウトカム(コミュニティにおける社会生活)を少し検討するだけでも、想像力を広げ、物事を改善する方法を考える助けになることもある(表2を参照)。

 さらに、身体的制限のある脊髄損傷者でも有意義な活動は可能である。リハビリの間に、脊髄損傷に関する専門家になる必要があるとわかったら、家族、友人、パートナー、専従介助者を教育することができるだろう。
 教育に加えて、自分自身のニーズを積極的に主張することが大切である。これは実行が困難なときもあるが、コミュニティに有意義な貢献をして、自分が望む重要なことを成し遂げていくような、生き甲斐のある生活をりっぱに送りたいならば重要である。◆

C1・C2・C3のアウトカム(PDF)


C4のアウトカム
-頸髄C4損傷者のために-

C4のアウトカム

C5のアウトカム
-頸髄C5損傷者のために-

C5のアウトカム

C6のアウトカム
-頸髄C6損傷者のために-

C6のアウトカム

C7-C8のアウトカム
-頸髄C7-C8損傷者のために-

C7・C8のアウトカム

L2-S5のアウトカム
-脊損L2-S5損傷者のために-

L2-S5のアウトカム

T10-L1のアウトカム
-脊損T10-L1損傷者のために-

T10-L1のアウトカム

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-脊損T1-T9損傷者のために-

T1-T9のアウトカム


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